【長期実践型インターンシップ】「旅するほどに、自然環境が良くなるホテル」へ。宿泊客が自然への理解を深めるプログラムの立案〜提供に、一緒に取り組むインターン生を募集!【#道東天職活動】
2005年に世界自然遺産に登録された知床。
森ではヒグマやシマフクロウ、海ではアザラシやシャチなどの動物が暮らし、冬の海では流氷を眺めることができます。実際に訪れたことがなくても、桁外れのスケールを持った雄大な自然のイメージが浮かぶ方も少なくないでしょう。
今回ご紹介するのは、そんな知床で60年以上も宿泊業を営み、現在は知床ウトロ地区で3つの宿泊施設を運営している北こぶしリゾートさんでのインターンのお仕事です。
▼過去のインタビューはこちら
老舗旅館としての伝統を守りながらも「知床を盛り上げたい」という想いから、アーティストとのコラボグッズ開発やサウナづくり、デンマークの世界的ショコラトリー「ピーターバイヤー」からのチョコレート・販売といった新しい事業にも積極的に参入している北こぶしリゾートさん。
クマとの共生を目指して始められた地域貢献活動「クマ活」もそうした新たな取り組みの一つです。今回インターンに参加される方には、クマ活に次ぐ、自然への理解を高めるプログラムの考案を任せたいのだといいます。
しかし、宿泊業を営む北こぶしリゾートさんはなぜ、クマ活をはじめとした自然への理解を高めるプログラムに注力しているのでしょうか。
今回のインターン募集の先に、どんな未来を思い描いているのでしょうか。
北こぶしリゾート 経営戦略室の広報・リクルート担当で、今回のインターン受け入れを担当する村上晴花さんと、同社専務取締役の桑島敏彦さんにお話をお聞きしました。
村上晴花(むらかみはるか)さん
北こぶしリゾート経営戦略室 広報・リクルート担当
1995年大阪府出身。北海道・江別の酪農学園大学にてヒグマの生態について学ぶ。大学卒業後、2017年に北こぶしリゾートに入社。ホテル内レストランの勤務を経て、2020年に経営戦略室に異動し、同グループの創業60周年記念事業として始められた「クマ活」を担当。クマが住宅地に入らないように行う草刈りやパトロール、クマについて参加者とともに考えるワークショップなどを通じて、クマとの共存を目指している。
村上さんの詳しいご経歴についてはこちらもご覧ください。
北海道オホーツク振興局「ホテルのお仕事」
Sittake 「『ふつう』じゃなかった子ども時代から得たもの。世界遺産・知床の魅力を守るということ」
桑島敏彦(くわじまとしひこ)さん
北こぶしリゾート 専務取締役
1981年北海道・斜里町ウトロ生まれ。2004年札幌国際大観光学部卒、大学卒業後、オーストラリア留学を経て旅行代理店に入社。2005年に知床グランドホテルに入社し、経営に参画。北こぶし知床ホテル&リゾート、KIKI知床ナチュラルリゾート、知床夕陽のあたる家ONSENHOSTELを運営する北こぶしリゾートにて専務取締役を務める。
※本プロジェクトは、一般財団法人 日本民間公益活動連携機構(JANPIA)の「休眠預金活用等」に選定されています。
「知床に恩返ししたい」から始まった、クマ活
専務取締役の桑島敏彦さん(左)、経営戦略室 広報・リクルート担当の村上晴花さん(右)
――北こぶしリゾートさんの事業はどれも魅力的ですが、やはり「クマ活」がひときわ目を惹きますね。これはどういった事業なんでしょうか。
村上 クマ活は、知床ウトロ地区の自然を代表するヒグマとの共存を目指して、北こぶしリゾートの創立60周年である2020年の節目にスタートした地域貢献活動です。知床では人とヒグマの生活が非常に近く、住宅街に迷い込んでしまったヒグマが駆除されることが少なくありません。
人命の安全を考えればやむを得ませんが、そもそもヒグマが住宅街に迷い込まないように努力することはできる。そこで、草刈りやパトロール、ヒグマの出没対策について話し合うワークショップの実施を通じて、クマと共存する方法を模索することにしたんです。
――村上さんは江別市の酪農学園大学にて、ヒグマの生態について学ばれたとお聞きしています。ホテル事業の一環として、クマ活を実施するアイディアは、村上さんが考案されたのでしょうか。
村上 実はクマ活は、私のアイディアから始まった事業ではないんです。弊社の経営陣が創業60周年の節目に「知床に恩返しができないだろうか」と考えて地域の方々に相談したところ、「ヒグマによる獣害が大変なので、草刈りだけでもやってほしい」というご要望をいただきました。そこで、当地区の野生動物管理をされている知床財団とパートナーシップを組んで、クマ活がスタートすることになったんです。
ーー北こぶしリゾートさんとしての取り組みにたまたま適任の方がいた、ということですね!
村上 そうですね。クマだけでなく、今でいうところのSDGsに近い問題意識も抱いていたので、個人的にもうれしかったです。
当時はレストランスタッフとして勤務していたのですが、お客さまの食べ残しが目立ちましたし、アメニティも使い放題。「世界遺産に登録されているエリアに行くとエコな活動がたくさんあるのに、一歩外に出たウトロ地区でこんなことをしていて良いのかな」と考えて、当時はまだ一度も話したことがなかった桑島専務に社内のチャットツールを通じて連絡をとり、一時間ほど話をしました。
専務は私の話を聞いたうえで、「村上さん、クマについて学んでいたんだよね。まだ詳しく決まっていないけど『クマ活』をやるから手伝って」と言ってくれ、翌年から経営戦略室に異動することになりました。
ーー経営陣の方々の柔軟さが感じられるエピソードですね!
村上 正直なところ、「この会社、神だ!」と思いました(笑)。
こうした経緯で創業60年の節目に始められたクマ活も、2024年で5年目を迎えました。毎年5~6月に行う草刈りには地域内外から多いときで70名が集まるなど、多くの方に愛されるコンテンツに成長したと感じています。リピーターの方はもちろん、知人を連れて再び参加してくださる方もいて、私にとっても毎年の楽しみです。
ただ、クマ活のメインの活動の一つである草刈りは、活動場所や人員の確保の都合から年に数日しかできず、草刈り以外のコンテンツもうまく生み出せていないのが大きな課題となっています。
今回のインターンに参加してくださった学生さんには、ホテルが毎日行えるようなかたちで、クマ活に続く、自然への理解や関心を高められるようなプログラムを考えていただきたいと思っています。
知床の自然ならではの美しさと緊張感を伝えるために
――そもそものお話なのですが、北こぶしリゾートさんはなぜ、「クマ活」をはじめとした自然への理解や関心を高められるようなプログラムを実践されているのでしょうか。
桑島 知床の地でホテルを経営する立場として何ができるかを突き詰めたら、それが必然だった、という感じでしょうか。
20代で全国を回って営業していたときに、ほかの観光地やホテルと比べて「温泉地」というカテゴリーでは、箱根や草津、北海道内では定山渓や登別といった有名どころにはかなわないと思い知らされることが多々あったんですね。「ホテルとして生き残るには差別化だ」と思って、何をすれば勝ち抜けるのかばかり考えていた時期もあったのですが、あるとき、ほかの地域と競争するのではなく、知床の独自性を追求することが大切なのではないかと気づいて。
知床エリアは何のためにあるのかと突き詰めて考え始めたときに軸になるのは、やはり自然だろうと。ただ、「自然が素晴らしい」だけに収めたくはなかったんですよね。
もちろん知床には、世界遺産に登録されるほどの美しい景観がありますが、それだけではない。ヒグマをはじめとした大型動物が圧倒的に多くて危険もある。でも、それこそが知床が持つ独自性なのではないかと。
ーー北こぶしリゾートの価値や魅力を追求していった結果、知床が持つ、美しいだけではない自然の奥深さにたどり着いたんですね。
桑島 そうですね。そうした知床の自然が持つ緊張感や野生動物の生態などの認知度を上げることが、知床に60年以上根差してきた北こぶしリゾートが果たすべき役割なのではないかとも考えています。
そうした経緯から、弊社では「ネイチャーリテラシーの向上」という言葉を掲げて、2020年からクマ活をはじめとしたプログラムを提供しているんです。
ーープログラムの始動から数年経った現在、変化や手応えを感じていらっしゃいますか。
桑島 ここ数年は知床の閑散期である2月に、流氷を目的として知床を訪れるお客さまが増えています。それもいわゆる観光目的ではなくて、環境に関する学びや価値観の変容を求めて来られる方が増えてきた印象です。流氷が観光資源としても捉えられていなかった時代、“漁業の邪魔者”と思われていた頃から考えると、大きな変化ですよね。
知床を代表する自然や動植物はたくさんありますが、中でも流氷は「地球温暖化の影響によって消失してしまうかもしれない」という儚いメッセージ性が感じられやすい事象の一つですから、環境問題という切り口で広く興味を持ってもらいやすいかもしれない。知床の自然を深く理解してもらえるようなプログラムの開発にはまだまだ可能性を感じています。
ホテルでの就業体験と知床観光を通じて、新プログラムの考案を
ーーいわゆる観光や”美しい自然”に留まらない知床の自然の価値がわかった気がします。改めて、今回インターンの方にお願いしたいお仕事の内容について教えていただけますか。
村上 ネイチャーリテラシーを向上させるプログラムの開発をお願いしたいです。ホテルの通常業務をこなしながらでも毎日実施できるようなものだとありがたいですね。
▲ウトロ港から望む「北こぶし知床Hotel&Resort」
ただ、最初の1~2カ月はホテルの業務や知床について深く知ってもらうために、住み込みでのホテル就業体験をしてもらいたいと思っています。8~9月は繁忙期なので働くのは大変かもしれませんが、スタッフとの絆を深められるのではないかという期待も込めて、あえて接客業務をしてもらうことにしました。
休日にはゲストとしてホテルを利用していただき、スタッフの目線では見えなかったお客さまのニーズや楽しみ方を見出してもらうことも考えています。もちろん、ホテルの外に出て知床観光するのもおすすめです。夏の知床はトレッキングやシーカヤックなどのアクティビティや海産グルメが楽しめる良い季節ですよ。
――“ラグジュアリーなリゾートバイト”のようなインターンですね!業務に携わってもらうほかに、インターンの方に期待していることはありますか。
村上 若い方の間での知床のイメージを刷新してもらえるとうれしいです。
北こぶしリゾートでは、いわゆるアッパーミドル層の方や、ご夫婦、ご家族連れのお客さまが中心で、未来を担っていく層への情報発信がどうしても弱い傾向があります。
それから、知床は世界遺産としての認知度はあっても「働く場所として」「お金を払っても行ってみたい面白い場所として」はイメージされにくい。「世界遺産として」以外のかたちで、知床を想起してもらえるようになるのが理想です。
ホテルの外から来た人ならではのフラットな視点で感じたことを、自分の言葉で発信してもらえたら、こうした変化は自ずと表れてくるのかなと思います。
――全国に無数にあるホテルの中でも、北こぶしリゾートさんで働くおもしろみはどんなところにあると思いますか?
村上 本当にいろんな人に会えることですね。館内のクマ活の展示を見た方が、私によく声をかけてくれるのですが、ときどきインバウンドのお客さまからも声をかけていただいてびっくりすることがあります。アメリカのワシントンD.Cからいらしたお客さまに「Save bear?」とクマ活のことを聞かれたときは、こんなに遠くから来て興味関心をもってくださる方もいるんだと感動しましたね。
社内にもユニークな人が多くて、従業員同士の距離が近いことも北こぶしリゾートの特徴です。その理由の一つとして弊社が家族経営であることもあると思います。社長が子どもの頃から働いているスタッフもいることからあだ名で呼ぶこともあるんです。
▲北こぶしリゾートの働きやすさについて語られている記事
ほかにも従業員が130名と顔が覚えられる範囲の規模感であること、従業員全員がウトロに住んでいること、BBQや忘年会、社員旅行などのイベントがあることなども仲の良さに関係しているかもしれません。
ネイチャーリテラシーの向上の先にある「知床を、つづけていく。」
――インターンの任期終了後、参加してくれた学生の方に期待していることはありますか。
村上 何かしらのかたちで継続して関わっていってもらえるとうれしいですね。
クマ活に来てくれた学生ボランティアさんの中には3年連続で参加してくれている方もいますし、自分が暮らしている網走でも地域をよりよくする活動をしたいと「アバ活」を立ち上げてくれた方もいます。
今回のインターンに参加してくださった方も、SNS上でゆるやかにつながりつつ、交流していけたらいいなと思います。
――北こぶしリゾートさんが思い描く、10年後の未来について教えていただけますでしょうか。
桑島 私たちのコンセプトである「知床を、つづけていく。」を体現していきたいですね。
▲北こぶしリゾートのコンセプト「知床を、つづけていく。」
“旅先”としての知床は、ホテルだけではなく、漁師さんやネイチャーガイドさん、周辺の飲食店など、知床で暮らす方々によって成り立っています。逆に言うと、今ある知床の資源を守っていかないと、私たちのビジネスを続けていくことができません。
知床の自然への理解が深まるプログラムを提供していけば、お客さまのネイチャーリテラシー向上につながりますし、”知床にしかない魅力”を求めて来てくださる方が増える。そうすると、間接的にではありますが、知床の自然やここで暮らす方々の生活を守ることにもつながるのではないかと。
知床に住む方々の暮らしを守るといった大それたことはできませんが、ここで生まれ育ってホテルを営んでいる以上、私たちのできることで、知床に貢献していきたいと思っています。
<求人内容詳細>
条件・スケジュール
・北海道斜里町ウトロにて、基本的に住み込みで活動できる方
・普通車の運転(お持ちでない方は要相談)
【日 程】トータルで6ヶ月間のインターンを想定していますが、現地/オンラインの日程は、相談して決定
8月〜9月 現地(繁忙期、ホテル業務中心)
10月〜11月 オンラインまたは現地
12月〜2月 現地(年末年始休暇あり)
【活 動】※相談により時間・週休日を設定
【好条件】斜里町までの往復交通費、指定の物件に無料で宿泊
【活動支援金】5万円/月✕6ヶ月分=30万円(食費実費)
コーディネート団体:一般社団法人ドット道東
対象となる人
・知床を好きになってくれる方
・地域の人と積極的につながることができる方
・北こぶしリゾートのビジョンに共感できる方
・人とのつながりや知見から、幅広い課題解決手段を模索できる方
事前課題(面談時にシェアいただきます)
自然環境に配慮した運営や宿泊客向けのプログラムを実施している他社事例について、良い・面白いと思うコンセプトや取り組みを、知床での再現性も想像しながら調べてください。
例)バリ島ウブドのホテル Mana Earthly Paradise
https://www.earthcompany.info/ja/blog/manaearthlyparadise/
要項・活動内容詳細はこちら「プロジェクトインデックス」(どちらのページからでもご応募いただけます)
https://www.project-index.jp/intern/28549
※休眠預金活用等について
休眠預金活用等とは、国民が金融機関に預けたお金のうち、2009年1月1日以降の取引から10年以上取引のない預金等を「休眠預金」として民間公益活動に活用する取り組みのこと。一般財団法人 日本民間公益活動連携機構(JANPIA)による休眠預金活用等では、資金分配団体を通じて、NPOをはじめとした民間公益活動を行う団体に、助成・出資が行われます。
一般社団法人 ドット道東では、道東エリアにおいて公益性が高い事業に取り組む組織・プロジェクトへのインターン生の派遣に助成金を活用し、プロジェクトの存続・拡大を通じて、道東エリアの活性化を目指しています。