釧路エリア
地域コーディネーター

オンラインでの合同企業説明会を開催!弟子屈、標茶、鶴居の3町村ってどんな場所?

ただいま募集期間外

「日本を代表するすぐれた自然の風景地」を守るために環境省が定める国立公園。北海道には都道府県最多の6つの国立公園があり、その半数が道東に位置しています。道東エリアは人を含む生き物すべてが自然とともに暮らす場所。
 
今回ご紹介するのは、そんな道東のなかでも内陸の豊かな森や湖沼に抱かれた弟子屈町・標茶町・鶴居村の3町村によるプロジェクトです。
 
人口減少や高齢化による人材不足を打開するため地域企業と求職者をマッチングし、さらには特産品や魅力的な宿泊施設、企業づくりなどを支援するそのプロジェクトを推進するのは「釧路北部地域雇用創造協議会」。このエリアに興味がある人へ、Zoomを活用したオンラインでの合同企業説明会を開催するということで、お話を伺いました。
ちょっぴりお堅いネーミングにどんな方たちが担当しているのか?と緊張しながら訪ねた弟子屈町役場で出迎えてくださったのは、なんとも柔和な笑顔のお三方でした。

【弟子屈町・標茶町・鶴居村】3町村オンライン合同企業説明会

<募集内容>
対象者:弟子屈町・標茶町・鶴居村に興味のある大学・短大・専門学生、一般の方など
日時:2022年11月26日(土)13:00〜16:00
場所:Zoomを使用したオンライン会場(弟子屈町公民館より配信)
参加企業:3町村で15社程度を予定
応募方法:釧路北部地域雇用創造協議会ホームページ内の申し込みフォームにて受付
応募締切:11月25日(金)

<こんな人におすすめ>
・弟子屈町、標茶町、鶴居村に興味のある方
・北海道の道東エリアでの就労に関心のある方、
 どんな仕事があるか話を聞いてみたい方
・自然の中で自分らしく生活してみたい方
・故郷や故郷に近い場所で仕事をお探しの方
・酪農業や観光業などに興味のある方
・若いうちからこの地域でより多くの経験を積みたい方

釧路北部地域雇用創造協議会の皆さん

メンバーは全員「U・Iターン移住者」だからこそ本音で話ができる!

リーダーの野呂敏克さんは弟子屈町の出身。中学生まで町内で育ち、釧路や札幌、東京で暮らしたのち、約35年ぶりに故郷での生活に戻ったそうです。
「帰ってみると案外、いいんですよ。昔なら田舎で不便があったと思いますが、今はインターネットもあって不便を感じない。畑仕事なんて好きじゃなかったのにチャレンジしたり、仕事の前後に釣りをしたり、東京では考えられなかった生活ができています」

野呂敏克さん

心から楽しそうに話す彼に、「野呂さん、満喫してますよね〜」と笑いかけるのは事業推進員の秋吉文絵さん。なんと歌手や歌の作り手として音楽業界で活躍されていたそうで、愛犬の介護をきっかけに東京から静かな環境の弟子屈に移り、2拠点生活を始めました。コロナ禍での世界の変化や「今までできなかったこと、私の人生に欠けていた部分を勉強したい気持ちもあって」、2年前に定住を決めたのだとか。

秋吉文絵さん

同じく事業推進員の篠原大和さんは、弟子屈町に移り住んでこの時まだ3ヶ月。「そうは思えないほど馴染んでる」と秋吉さんが言う通り、ずいぶんと町に知り合いが多い様子です。旅行で度々訪れていた北海道に移住を考えていたとき、弟子屈町を訪れ、町の交流の場「弟子屈JIMBA」で野呂さんや町民の方々と出会ったそう。協議会スタッフの募集の話を聞いてさっそく応募し、あれよという間に関東から移住に至りました。

篠原大和さん

つまり皆さん、生粋の移住組。このエリアで働いてみたいと考えている他地域の人、あるいは地元に戻って仕事を探したい人にとって、心強い先輩たちでもあるのです。経験者に直接相談できるのはありがたい!
 
釧路北部地域雇用創造協議会の主な取り組みは、3町村に拠点を置く事業者を紹介する合同企業説明会の開催や、雇用につながる講習会の開催です。

UIJターン希望者への合同企業説明会は東京などの都市部で年に数回開催していますが、今回はよりさまざまなエリアから気軽に参加できるよう、オンラインで開催します。

じつはここ数年、地方に目を向け、移住と求職を希望する20代・30代の若い世代が弟子屈町では増えているそうです。いざ仕事を探そうと思った時、若い世代がまず情報を集めるのはインターネット上から。しかし、小さな事業者は自社のウェブサイトを持っていないことも多く、探したくても「企業の情報がない」という事態になりがちです。
事業者側にしても、人材を探したくてもハローワーク以外に頼る場所がないことも。

そこでこの協議会が間に立ち、3町村の事業者と全国にいるはずの求職者をつなげる役割をしているのです!

また、地元で育った子どもたちは選べる高校の少なさや大学がないといった状況から、十代のうちに他地域へ出て行ってしまうこともあります。人口減少に歯止めをかけるには、地元の子どもたちにとって「帰ってこれる理由」になるだけの魅力ある企業づくりも必要です。
自身も35年ぶりにUターンした野呂さんはこう言います。「子どもたちが外の地域を見るのも大事なことだと思います。ただ故郷に帰りたいと思った時に、受け皿になれる場所、そして“いつでも帰ってこれるんだ”という地元のイメージを残しておきたい」。

就職活動中の大学生などにも、今すぐではなくとも将来のどこかで「地元に戻ってはたらくという選択肢もあるんだ!」というイメージを作ってもらえるよう、地元から発信するのが今回のオンライン合同企業説明会というわけです。

ところで、企業説明会以外にも行なっている「講習会」とはなんでしょうか?

「求職者向けの講習会は働くために必要な技術や知識を身につけていただくものですが、参加する方々に今どんなことを知りたいのかヒアリングしたうえでメニューを構築していますので、その都度内容が変わります。資格を取得するものではありませんが、たとえば業界についての知識を得るための座学だとか、建設現場なら除雪について実演で見学する機会だとかを設け、仕事のイメージを具体的に持ってもらえるよう組み立てています」と秋吉さん。
 

仕事はその土地の産業や気候、地域社会を構成する要素によっても求められる分野が変わるものです。北海道以外の土地から来る人にとっては、どんな職業があるのかすら未知の世界。地域の仕事を理解する場が必要なのです。

さらに、求職者向けだけでなく“事業者向け”の講習会も行っているといいます。「求職者が働きやすい労働条件について勉強する機会を作るなど、事業者の意識改革も必要と考えています。事業者側は長期で働ける若い人材を求めていますが、地方だからといって生活費が安上がりになるわけではなく、地方には地方の固定費というものがあります。たとえば冬の灯油代だったり、生活の足となる自家用車の維持費だったり。そういったものに対応できるだけの“安心感ある賃金や福利厚生”について、事業者側にもっと考えてもらえるよう促すことも協議会で行なっています」。

3町村で人材が求められている仕事について求職者に情報を提供し、事業者側の受け入れ環境についても改善する。そうした橋渡しをするのが協議会の大切な役割なのです。

自然のなかで生きるこのエリアならではの職種も

野呂さんによると、このエリアで重点業といわれる職種は「建設」「介護医療」「酪農」「観光」の4つ。とくに3町村に共通する主幹産業である酪農の仕事は募集が多いそうです。
「一般的にはかなり大変なイメージがあると思うんですが、今は酪農業も昔とはずいぶん変化しています。法人として経営している方などは施設も近代化していて、仕事の効率化を図っています」。なかには住む場所を用意している事業者も少なくないのだとか。

「弟子屈町でいえば川湯温泉街や屈斜路湖がありますので、温泉宿など観光業の募集も多いですよ」と秋吉さん。カヌーなどの趣味のために移住してくる人もいるそうで、「ガイドをしていらっしゃる方などは、ほとんど移住者かもしれませんね。起業する方がかなり多いです。そういった、将来起業を考えている方にも役立ち、この地域に合うような内容での講習会を組み立てています」。
 
篠原さんのように、旅行がきっかけでこのエリアに興味を持つ人も多いといいます。「北海道旅行といえばまずは札幌、小樽、函館、富良野あたりが初めにあって、稚内に行ってみたり道東を周遊したりするのはけっこう上級者ですよね(笑)。でもこの辺りに来て本当に北海道らしい景色というか、ここならではの自然に触れちゃうと、僕みたいにハマっちゃう」。

 阿寒摩周国立公園に位置する弟子屈町には、摩周湖と屈斜路湖という道東を代表する湖の景観があり、美幌峠や藻琴山、摩周展望台からの眺めは心が震えるほどの美しさ。強酸性の温泉で知られる川湯温泉は硫黄の香りが漂う温泉街で、開拓時代から人々を癒やしてきました。
 
「大きな川のほとり」を意味するアイヌ語「シペッチャ」から名付けられた標茶町はその名の通り、釧路川や別寒辺牛川が大地を潤し、ラムサール条約登録湿地である釧路湿原の多くが標茶町のなかにあります。折り重なる丘陵に牧草地が広がる風景は日本離れしたスケール感です。
 
やはり釧路湿原の一部を構成する鶴居村も良質な生乳を生産する土地で、人口2500人ほどの小さな村で作るチーズが有名です。国の特別天然記念物・タンチョウが多く生息する場所としても知られていて、冬の早朝、ねぐらの川に立ち込み、幻想的な蒸気霧に覆われたタンチョウの姿を撮影しようと全国からカメラマンが集まります。

大自然と隣り合わせの暮らしは、都会とは全く違う種類の豊かさを私たちに見せてくれることでしょう。
 
「企業説明会と講習会のほかに“就労体験”という事業もしています。数日間の滞在期間中に仕事を体験し、宿泊補助が出ますので、旅行と合わせた体験を通してこのエリアの魅力を伝えることができたらいいなと」。実際に旅をしながらこの土地への愛着を育んだ篠原さんだからこそ、同じような感覚を持つ人は必ずいると確信しているようです。

考え方によっては交通の便がよいことも魅力のひとつ。
「3町村の周辺には釧路、女満別、根室中標津という3つの空港があります。それぞれ東京や札幌への便が毎日あり、釧路空港と関西国際空港とをつなぐLCCも飛んでいます。空港まで車で30分〜1時間程度の移動をどう感じるかは人それぞれですが、道東に暮らしていると1時間くらいの移動はすぐそこという感覚になる」と野呂さん。
 
北海道ならではの距離感ですが、信号機があまりなく混雑しにくい道路での移動は、それほど苦にならないのも事実です。

「いずれは自分の宿を」夢へ向かって前進中!

それぞれの想いが溢れて会話が止まらない……!そんな楽しいインタビューの途中、東京から移住して地域の企業で働いているという高山七海さんがさらに加わってくれました。

高山七海さん

高山さんが勤めているのは弟子屈町と埼玉県に拠点をもつ「北国からの贈り物 株式会社」。素敵な企業名ですが、何をしている会社なのでしょう?
 
「宿泊施設の運営と通販事業、それからふるさと納税の返礼品を扱っています。弟子屈には魅力的な宿泊施設が沢山あります。特にペンションや民宿ですと、建物、食事、ガイドなど、オーナーの思いを凄く感じられます。一方で、実際に何人かのオーナーの方にお話を伺う機会があったのですが、中には「自分達はやりたい事をやり切ったから、次の世代に経営のバトンを渡したい。」と思っている方も何人かいらっしゃいました。
今僕が携わっている“民宿美里”も弊社が引き継いでリニューアルオープンした施設です。これから、短期移住体験のために滞在できるようなゲストハウスにしていきたいと思っているところです」。
そう話す高山さんは、生まれも育ちも東京都。弟子屈に来た一番の理由は「自身も弟子屈で宿を運営してみたかった」ことだといいます。

民宿美里でのお仕事の様子

なぜ宿を、なぜ弟子屈町で?そんな疑問が次々と浮かびます。
 
「実は東京でも宿泊施設、いわゆるホステルでマネージメントを任されていました。ですが、オリンピックを前に宿泊施設が急増して、ものすごい価格競争が始まってしまった。それを現場で体験したとき、僕がやりたいのはそういう競争ではなく、その土地や宿での体験を一人一人にもっとしっかり伝えていけるようなものだと思ったんです。それは東京ではないな、と」
 
のんびりした田舎町なら日本中にありますが、弟子屈を選んだ理由はどこにあったのでしょう。
 
「父が標茶町の出身なので、小さい頃に遊びに来た記憶があったんです。自然が多い印象でしたが、社会人になって訪れたとき、やっぱりここには素晴らしい自然があるとあらためて感じました。東京からの飛行機もそれほど時間がかからないし、意外とハードルが低いと思えて」

幼少期の頃、硫黄山を訪れた写真

高山さんには理想の宿泊施設像があるのだそう。それは、一日に自らがきちんとお世話できる少人数だけを受け入れる小さな宿。今は弟子屈の自然について学んでいる最中で、「将来的には食事や自然ガイド、旅行業の手配もできて、僕の宿に泊まったら弟子屈を丸ごと楽しめる!という形が理想です」と、目標は具体的です。
 
「鶴居村に、写真家でネイチャーガイドの安藤誠さんが営まれている“ヒッコリーウィンド”という宿がありまして。滞在したとき、本当に世界トップレベルのガイドだと感じました。そのスタイルはすごくいいなと思っていて、おこがましいですが、目指すならそこだと。今はまだ全然なんですけど……」。高山さんは控えめに、けれど強い意志を持って語ります。

高山さんが撮影した摩周湖の写真

最高のお手本がいるエリアで、高山さんが今の会社と出会ったのは、篠原さんをこの町に導くきっかけとなった「弟子屈JIMBA」の存在が大きいといいます。高山さんと同世代の川上椋輔さんという方が地域おこし協力隊をしながら運営しており、道東の圧倒的な自然の包容力に惹かれて弟子屈へ引っ越してきたことを話すと、ちょうど民宿を引き継ごうとしていた現在の会社を紹介してくれたのだそう。
 
移住者がこの町に馴染むことができる大きな理由の一つは、そんな交流の場の存在にもありそうです。

交流の場になっているという弟子屈JIMBA

「東京には東京の面白いものがあって、カルチャーが混ざり合っている感じがすごく好き。生活はこちらに置いて、たまに東京に行くっていう今のやり方がちょうどいいと感じています。移住にあたって不安はけっこうありましたが、やはり来てみないと前に進めなかったと今は思います。地方にはまだまだチャンスもある。計画は詰め切れていませんが、ちゃんと続けられる形でやりたいと思っています」

現在、移住して1年半。夢は確かだけれど、現在の会社の社長へ感謝の気持ちが大きく、しっかり貢献してからいいタイミングで夢へと歩みを進めるつもりです。
移住の際はお付き合いしていた女性も一緒に来てくれたそう。東京では結婚についてあまり考えられない状況だった気持ちが、「なぜかわかりませんが、こちらに来てみたら自然と結婚に行き着いた。休日は子どもと過ごしていますが、家族と過ごす時間も東京よりずっと持てているんだと思います」。

この土地の自然は、人の気持ちに不思議な安心感を与えてくれるのかもしれません。大丈夫だよ、と。お話を伺った皆さん、もしかしたら都会で暮らしていたときとはずいぶん違う表情なのでは……?
ふと、そんなことに思い至りました。
 
「この辺りはわりと移住者に慣れていて、受け入れてくれる雰囲気がある」と皆さん口を揃えます。ただし、オンライン説明会では直ちに仕事と結びつけるのではなく、「3町村のことをまず知ってもらうことが一番」と野呂さん。
 
「仕事をご紹介するのが役割ですが、すぐに働くということではなく、北海道が好きだったり興味を持っているという方に、このエリアのことを知ってほしいと思います。気軽にこちらの生活の話などをしながら、逆に参加される方からの声も聞きたいという気持ちですね」

オンライン合同企業説明会は開催の前日(11月25日)まで受付中。
移住を経験した方々に、実際のところを直接聞けるチャンスです!
何気ない話をしているうちに、自分の理想が見えてくるかもしれませんよ。

【弟子屈町・標茶町・鶴居村】3町村オンライン合同企業説明会
<募集内容>

対象者:弟子屈町・標茶町・鶴居村に興味のある大学・短大・専門学生、一般の方など
日時:2022年11月26日(土)13:00〜16:00
場所:Zoomを使用したオンライン会場(弟子屈町公民館より配信)
参加企業:3町村で15社程度を予定
応募方法:釧路北部地域雇用創造協議会ホームページ内の申込みフォームにて受付
応募締切:11月25日(金)

<お問い合わせ先>
釧路北部地域雇用創造協議会
〒088-3211北海道川上郡弟子屈町中央2-3-1
弟子屈町役場庁舎内
TEL:015-482-2940 FAX:015-482-5669
mail:info@stt-job.com
担当:野呂敏克

取材・文

春日明子(かすがあきこ)

1979年生まれ、神奈川県横浜市出身。会社員時代に釣りに目覚め、通勤電車で読んでいた釣り新聞の「編集部員募集!」の文言に即応募、編集者となる。編集プロダクションに転職後、旅行雑誌やコーヒー専門誌、機内誌を中心に編集・執筆活動をしながら休日は東京湾で釣り&干物づくりに励む。ついには鮭釣りに訪れた北海道で人生の伴侶を釣り上げ、2016年に別海町へ移住。酪農地帯の真ん中で原稿を書く。