半世紀以上続く焼肉店を引き継ぎ、新得町屈足地域の“温度を1度上げる”仲間を募集します。【株式会社atLOCAL】
北海道・新得町の屈足地区に、54年にわたって地域の人たちに親しまれてきた焼肉店「屈足平和園」があります。
家族で食事をした日。誕生日や祝い事。友人や仕事仲間と囲んだ焼肉。屈足平和園は、単に焼肉を食べるための場所ではなく、地域の人たちの暮らしの中に、いくつもの思い出を残してきた店です。そんな屈足平和園が、2026年末で現在の営業を終えます。
そして2027年春、士幌町を拠点に地域事業を手がけるatLOCALが事業を引き継ぎ、新たなスタートを切る予定です。ただ、目指しているのは、古くなった焼肉店を若い世代がおしゃれにリニューアルすることではありません。
atLOCAL代表の堀田悠希さんが大切にしているのは、これまでのお客さんが持っている思い出の延長線上に、次の店をつくること。新しいものをつくる前に、まずはこの場所に積み重なってきた時間を受け取る。そこから、屈足のこれからを考えようとしています。
屈足平和園は、創業者の森さんが立ち上げ、その後、小林利光さんがバトンを受け取り、地域の店としてつないできました。今回、そのバトンを小林さんの娘・堀田悠希さんとatLOCALが受け取ります。ただし、今回の事業承継を決めた理由は、「家族の事業だから」ということだけではありません。
atLOCALとして約10年間、地域の中で事業や組織づくりに取り組んできた。その経験を経た今だからこそ、屈足平和園という店を入口に、屈足という地域そのものに深く関われるのではないか。そんな思いがありました。
屈足平和園を引き継ぐことは、一つの焼肉店を経営するだけではない。地域の人たちと関係をつくり、この地域で何ができるのかを一緒に考えていく。新しい挑戦の始まりでもあります。

なぜ、「新得」ではなく「屈足」なのか

「新得町」ではなく「屈足」。
堀田さんは新得町ではなく「屈足」という地域というでやる面白さを感じています。堀田さんは以前から、屈足で行われてきた地域のイベントや、そこに関わる人たちの活動を見てきました。大きな地域ではありません。人口減少や空き店舗など、地方が抱える課題も見えています。
一方で、地域を歩いていると「屈足だから」という感覚を持っている人たちに出会います。
農家、商店、建設業、宿、地域活動。
一人ひとりの顔が見え、誰かが何かを始めると、その動きに周りの人たちが反応する。事業承継を決めてから、堀田さんたちは屈足の人たちへの挨拶回りを続けています。
そこで聞こえてきたのは、
「屈足平和園、なくなると思っていた」
「またやってくれるならうれしい」
「何かできることがあれば言って」
という声でした。
忙しい時期にも関わらず、半日かけて地域を案内してくれた農家もいました。地域を歩くほど、まだ知らなかった人や産品、仕事が次々と見えてきます。
話を聞けば聞くほど、「これを使って何かできるかもしれない」と思える素材がある。外から見れば、小さな地域。でも、中に入ってみれば、まだ形になっていない可能性がいくつもあります。
「何もない」と思っていた屈足で、暮らしたいと思うようになった
今回のプロジェクトで中心メンバーとして動いているのが、田中茉実さんです。

夫は屈足出身で、屈足平和園にも何度も来たことがありました。とはいえ、田中さん自身にとって屈足は、もともと「夫の地元」。
地域の人たちと深く関わった経験は、ほとんどありませんでした。屈足平和園のプロジェクトに入り、一軒一軒挨拶をして、地域の人たちと話すようになると、その印象が変わっていきました。
何もないと思っていた地域には、実際に話してみると、やりたいことを持っている人がたくさんいる。農家には独自の工夫があり、地域で商売を続けてきた人には積み重ねてきた歴史がある。そして、新しく入ってきた自分たちに対しても、想像していた以上に地域の人たちは歓迎してくれました。
やがて田中さんは、屈足で暮らすことを考えるようになります。田中さん自身もちょうど、人生の転機にいました。育休中で、子どもはまだ小さい。30代を迎え、子育てを大切にしたい一方で、仕事にもきちんと取り組みたい。その両方をどう実現するのかを考えていた時期でした。そんなタイミングで聞いた、屈足平和園の事業承継の話。
田中さんは、頼まれたわけでもないのに、この場所で何ができそうかを企画書にまとめ始めました。考えているうちに、次々とやってみたいことが浮かんできたといいます。そして、堀田さんが屈足平和園について話していた考え方にも惹かれました。
「店の売上だけを考えるのではなく、地域の中で商売をする以上、地域との関係にも責任を持つ。」
「地域を盛り上げる」のではなく、そこで暮らしている人たちと一緒に豊かになっていく。田中さんは、その考え方を聞いて、自分もこの場所で一緒にやりたいと思いました。
まず、新しいものをつくる前に「思い出」を集める

屈足平和園の再スタートに向けて、すでにいろいろなアイデアが出ています。
子ども連れでも過ごしやすい店。
焼肉の後に楽しめるスイーツ。
地域の農産物を使った商品。
でも、その前にやろうとしていることがあります。
これまで屈足平和園を利用してきた人たちから、店の思い出を集めることです。
「子どもの頃、家族で来ていた」
「昔ここでアルバイトしていた」
「このメニューが好きだった」
そんな一人ひとりの記憶を、現在の営業が終わるまでの期間に集めていきます。
店頭だけでなく、SNSなどを通して、今は地域を離れている人からも声を集める予定です。
集まった思い出は記録として残し、新しい店でも見られる形にしたいと考えています。
田中さんたちが考えているのは、まず、54年間続いてきた屈足平和園に「ありがとう」を伝えること。その上で、集まった思い出も一緒に次の店へ持っていくことです。何を変えるかを考える前に、何が大切にされてきたのかを知る。新しい店の名前も、そうした地域の記憶を受け取った先に考えていきます。
54年続いた店から、次の世代へ渡すもの
創業者の森さんから、2013年頃に経営のバトンを受け取った小林利光さんが、取材の中で何度も話していたことがあります。

それは、店の都合ではなく、お客さんを第一に考えることです。お客さんを店側のペースに合わせるのではなく、お客さんのペースに店が合わせる。家族連れでも、一人で来る人でも、地域の集まりでも、それぞれが心地よく過ごせるようにする。
小林さんは、そうした日々の積み重ねが、地域に長く必要とされる店につながると考えてきました。だからこそ、地域の人から「この店が必要だ」と言ってもらえているうちは、きちんと続けなければならない。そんな思いで、屈足平和園と向き合ってきました。
一方で、事業を娘に引き継ぐからといって、自分のやり方をそのまま残そうとしているわけではありません。取材の中で小林さんは、事業を「神輿」に例えました。自分が担いできた神輿を次の人に渡したら、その先は任せる。必要な時には助言するけれど、自分のやり方に縛りつけない。
その姿勢の根底にあるのは、「次の人たちには、次の人たちのやり方がある」という考え方です。変えていいものは変えていく。でも、お客さんを見ることだけは忘れない。その考え方は、堀田さんが新しい店で大切にしたいこととも重なります。
堀田さんはこれからの店について、「54年間のお客さんの中にある思い出の延長線上になるような焼肉事業でなければならない」と話します。

若い会社が引き継ぐと聞けば、「おしゃれな新しい店になるのでは」と期待する人もいるかもしれません。
もちろん、新しいアイデアも取り入れていきます。でも、すべてを新しく塗り替えるわけではありません。焼肉は、誰かと会話をしながら食べる料理です。
家族が集まる。
友人と話す。
子どもがいる横で、大人たちが時間を過ごす。
田中さんは、新しい店もそんな「地域のコミュニティーの場所」にしたいと考えています。おいしい肉を出すことは大前提。その上で、「今日ここに来てよかった」「また家族で来たい」と思える時間をつくる。それが、これからの店の土台になります。
人口ではなく、「豊かさ」が増える地域へ
堀田さんに、「屈足の次の50年」をどう描いているのか聞きました。

かつて屈足は、ダム工事などを背景に多くの人が集まり、地域に活気があった時代がありました。その後、人口が減り、空き店舗も増えてきました。地方の多くの地域と同じように、屈足もさまざまな課題に直面しています。
では、もう一度人口を増やすことがゴールなのか。堀田さんは、必ずしもそうではないと考えています。もちろん、田中さんのように「ここで働きたい」「ここで暮らしたい」という人が増えることはうれしい。でも、それだけではない。
すでにここで暮らしている人たちが心のどこかに持っている、
「屈足って、いいよね」「やっぱりここが好きだな」という気持ち。
日常の中で少し忘れかけているその感覚に、もう一度火をつける。
堀田さんは、それを「地域の温度を1度上げる」と表現します。
人口という数字だけではなく、この地域で暮らす人の豊かさが増えていくこと。「ここに住んでよかった」と思える人が増えていくこと。その未来に、自分たちの仕事が少しでも関われたらいい。一つの焼肉店だけで、地域全体を変えられるわけではありません。
でも、小さな店を中心に人が集まり、会話が生まれる。
農家と新しい商品を考える。
地域のお祭りに参加する。
商工会で新しい仲間と出会う。
そんな小さなコミュニティーが少しずつつながれば、地域の景色は変わっていくかもしれません。atLOCALがこれまで地域でやってきたことも、そうした積み重ねでした。

募集するのは、「焼肉だけをやりたい人」ではありません

新しい店のスタートに向けて、一緒に働く仲間を探しています。もちろん、仕事の中には調理があります。接客もあります。でも、堀田さんが求めているのは「この地域にどっぷり没入できる人」です。
焼肉店の中だけで仕事を完結させるのではなく、自分の仕事の先に、地域が少し良くなる未来を想像できる人。地域の農家と出会い、新しい商品を考えるかもしれない。地域のお祭りに出店するかもしれない。お客さんからもらった一言から、新しいサービスが生まれるかもしれない。
「焼肉屋だから焼肉だけ」ではない仕事が、ここにはあります。
田中さん自身も、それを楽しみにしています。atLOCALでは、年齢や社歴に関係なく、アイデアを出すことができる。良いと思ったものは、実際に形にしていくことができます。だから、焼肉だけではなく、地域の中でいろいろなことに挑戦してみたい人にとっても、面白い仕事になるはずです。
まだ、完成された職場ではありません。新しい店も、新しいチームも、これからつくっていく段階です。だからこそ、自分の役割も一緒につくることができます。
54年間、地域の人たちの思い出を受け止めてきた屈足平和園。その歴史に一度「ありがとう」を伝え、2027年春、新しい一歩を踏み出します。目指しているのは、昔をそのまま保存することでも、すべてを新しく塗り替えることでもありません。
これまでの記憶を土台に、その続きをつくること。そして、この先の50年も、「屈足にこの店があってよかった」と思ってもらえる場所にしていくこと。
その続きを、一緒につくる仲間を探しています。

一緒に、屈足のこれからをつくる仲間を募集しています
ここまで読んで、「屈足という地域に少し興味が湧いた」「この店づくりに関わってみたい」と思ってくださった方へ。
新しい屈足平和園の立ち上げに向けて、atLOCALでは一緒に働く仲間を募集しています。求人票上の職種は「料理長候補」です。もちろん、焼肉や一品料理の調理、仕込み、メニューづくりなど、飲食店としての仕事があります。ただ、この記事で紹介してきた通り、私たちが探しているのは、調理だけをする人ではありません。
地域の人と話すこと。
農家や事業者と出会うこと。
地域の食材から新しいメニューを考えること。
お祭りや地域の取り組みに関わること。
そして、お客さんと一緒に、この店を育てていくこと。
そんなことまで含めて楽しみながら、屈足という地域にどっぷりのめり込んでくれる人と出会えたらと思っています。
「ちょっと気になる」くらいでも構いません。まずは一度、屈足に来て、店や地域の空気を感じてもらえたらうれしいです。
募集職種
屈足平和園 リニューアルオープニングスタッフ/料理長候補
雇用形態
正社員
勤務地
北海道上川郡新得町屈足幸町 屈足平和園
給与
月給280,000円〜320,000円
※経験・能力・前職給与を考慮して決定します。
※上記金額には固定残業代(月20時間分、35,300円〜40,300円)を含みます。固定残業代は時間外労働の有無にかかわらず支給し、20時間を超える時間外労働については別途割増賃金を支給します。
仕事内容
焼肉・一品料理の調理、仕込み
新メニューの企画・開発
食材の発注、在庫・原価管理
リニューアルオープンに向けた店舗づくり
地域の生産者や事業者との商品・企画づくり
店舗運営、チームづくり など
勤務時間
1か月単位の変形労働時間制
営業時間を基本に、仕込み・片付けを含むシフト制
予定営業時間
ランチ 11:00〜15:00
ディナー 17:00〜20:00(ラストオーダー)
歓迎する経験・資格
飲食店・調理業務の経験
調理師免許
食品衛生責任者(入社後の取得も可)
普通自動車運転免許(AT限定可)
調理経験や技術も大切ですが、それ以上に、地域に入り込みながら店を一緒につくっていきたいという気持ちを大切にしています。
待遇・福利厚生
社会保険完備
交通費支給
昇給あり
賞与あり
車通勤可
資格取得支援あり
社員割引あり
U・Iターン歓迎
こんな方と働きたいです
地域の人とのコミュニケーションを楽しめる方
決まった仕事だけでなく、自分でアイデアを考え形にしてみたい方
地域の食や農業に興味がある方
新しい店をゼロからつくることを楽しめる方
屈足という地域に関わりながら暮らしてみたい方
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写真:渡辺誠舟
文:野澤一盛
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