【後編】斜里町ウトロ「訪れてよし、働いてよしの北のネイチャーリゾート」を目指す北こぶしリゾートでは一緒に働く仲間を募集しています
知床という北海道さいはてのホテルでありながら、都市の高級ホテルにも引けを取らない洗練された空間で、スタッフたちがはつらつと働く姿がまぶしい。
そこには、積極的なリニューアルと試行錯誤の繰り返しがありました。
後半は、桑島敏彦専務に、世界自然遺産である知床の中核地で3つのホテルを展開する「北こぶしリゾート」のブランディング事業についてお話を伺いました。
【前編】斜里町ウトロ「訪れてよし、働いてよしの北のネイチャーリゾート」を目指す北こぶしリゾートでは一緒に働く仲間を募集しています【#道東ではたらく】はこちらから↓
「疑問だらけ」からのスタート
─── 知床が2005年に世界自然遺産に登録されて以降、そのブランドに対して、北こぶしリゾートに限らずローカルの宿泊施設のホスピタリティがなかなか追いつかない状況がありましたね。リブランディングまで経緯を聞かせてください。
2005年に東京の旅行会社から知床にUターンしてきたときは、もう疑問だらけだったんです。
ちょうど世界自然遺産になった年で、お客様もたくさんいらしてくださっていたのですが、ホテルに関しては納得いかないことだらけ。
備品ひとつとっても、客室も、なにもかも「古くさいなあ!」って(笑)。当時は社長だった父に相当、詰め寄りましたね。
それはもう強気で頑張りましたよ。どうしたら、世界に誇れるようなホテルになれるのだろうかと、じっくり考えました。
まず、典型的な和風温泉旅館からの脱却を図りました。やっぱり知床の魅力は圧倒的な自然があってこそ。
温泉だけではなく、ヒグマやエゾシカなど野生動物観察や、知床五湖のトレッキングだったり、ネイチャーツアーを目的にしたお客様の多くが連泊してくれています。
私たちの世代は地域や自然を大切に、世界に誇れるネイチャーリゾートを目指そう、と舵を切りました。
その延長線上に、2018年のグループ3ホテルのリブランドや、昨年の「北こぶしグループ」から「北こぶしリゾート」への名称変更があります。
スタッフの意識も変わりました。備品ひとつを選ぶにしても「ネイチャーリゾートとしてコンセプトに合うかどうか」という会話が自然に出てくる。
旅館時代からのアットホームさは受け継ぎつつ、それぞれ自分の思うネイチャーリゾート観に基づきながら自発的に動いてくれています。
理想のネイチャーリゾート像
─── 専務の目指す、知床のネイチャーリゾート像とはどういうものでしょう?
知床での滞在を通してお客様が「自分たちの地域でも自然を大切にしていこう」と思う起点となれば嬉しいです。
実際、お客様からの質問もホテル内のことより、知床でのアクティビティやネイチャーツアーについても聞かれることが多いんです。
宿泊自体を目的にするのではなく、知床の自然を体験する手段のひとつ、ということですね。
かつては「旅館のオヤジ」たちが主役の時代もありましたが、今の知床はアクティビティやネイチャーツアーが主役。
ネイチャーガイドさんたちとパートナーシップを結んで、地域全体の経済活性化を目指してきたいです。
─── まちやど(街を一つの宿と見立て、宿泊施設と地域を繋ぎ、町ぐるみでもてなす事業)的な考えに近いですね。
そうですね。お客様を抱え込まず、ホテルはあくまで知床を体験してもらったり、自然について理解を深めてもらうためのきっかけのひとつだと捉えています。
アーティストとのコラボから見える知床
─── リブランディングの流れで、アートを意識した空間や、アーティストとのコラボグッズの制作も盛んですね。
はい。2010年から彫刻の森芸術文化財団(神奈川県)のサポートでアート事業を展開しており、ホテルのいいスパイスになっています。
知床独自の素晴らしい自然があるからこそ、アーティストの個性と掛け算して、より他の観光地との区別化につなげたい。
グッズを通して、知床の世界観をそのまま持ち帰ってもらえたら嬉しいです。
最大公約数的な方向に行かず、世界観や価値をわかってくれる人が面白がっていただけたらそれでいい。
知床もそれと同じで、都会派な人には不向きでしょうが、自然大好きという人にはたまらないと思います。
とはいえ、さいはてと言われている環境なので、これからは多拠点生活のひとつとして働く人がいてもいいと思うんです。
最近、面白い人が集まり始めていますよ。年間360日ぐらい釣りをしている調理スタッフもいます。斜里は鮭の水揚げ量日本一の町でもあるし。
そのスタッフによると、ここを拠点に道東全域の海、川、湖を巡ると、ものすごく楽しいそうで、ライフスタイルは釣りを中心に回っている。
そういうのって面白いじゃないですか。夏の知床なんて最高です。2月の流氷シーズンも、いまだに毎年ワクワクします。
もちろん、ホテルですので基本的にはおもてなしの仕事をきっちり務めていただきますが、自然に高い関心がある人には、より充実感を得やすい環境だと思います。
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最後は、入社5年目、経営戦略室で広報を担当する村上晴花さんに、リアルな「知床ライフ」と、知床ならではのCSR(企業の社会的責任)活動などについて伺いました。
「自然バカ募集」が決め手
─── 北こぶしリゾートに入社したきっかけは何だったのでしょうか。
大阪府出身ですが、大学(北海道江別市/酪農学園大学)でヒグマの調査研究をしていた流れで、在学中に知床博物館でアルバイトをしたのが初めての知床です。
日本離れした景色や空気感に惹かれて、接客業が好きだったこともあり、北こぶしリゾートに興味を持ちました。
求人パンフレットの題名が「自然バカ募集」だったことが最大の決め手です(笑)。ホテルというより、「知床に就職した」という感覚ですね。
─── 実際に知床に住んでみて、いかがですか。
単身寮はホテルから徒歩圏で、トイレ、ユニットバス付きワンルーム。同僚が近くにいるので、困ったことがあったら公私ともに助けてもらえる環境です。
それが苦にならず、安心感を覚えるタイプの人なら向いていると思います。
普段の休日は、森林散策に行くことが多いです。カムイワッカ湯の滝までマウンテンバイクでサイクリングしたり、最近はシーカヤックにも初挑戦しました。知床五湖を引率するガイドの資格を取って、ツアーもしています。
土地柄、車の免許は必須です。車を持っていない人も、レンタカーを使ったり、同僚の車に乗り合わせたりと工夫していますね。
斜里町の中心市街地まで片道約40分、網走市まで約1時半ドライブしてショッピングに行くこともあれば、ホテルの閑散期には長期休暇をとって語学留学をしたこともあります。
─── 知床を拠点に、いろんな楽しみ方ができるという感じですね。
ウトロ地域の人口が千人ちょっとで、病院がなくて診療所のみとか、都会と比べたら不便さはありますが、健康でさえあれば日用品も車で買い出しに行ったり、通販を利用したりで、割と何とかなっています。
ただ、不便さを上回る魅力があると実感しているので、個人的に居心地はすごくいいです。
─── 北こぶしリゾートでのお仕事についてお聞かせください。
最初はレストランでの接客を約2年半勤めました。私にとっては会社全体としてのサイズ感、スタッフそれぞれの個性が見える距離感がちょうどいいですね。
ロビーでお客様に知床の楽しみ方や自然保護のルールなどを伝えるトークイベントにも駆り出されたりしていました。
そのうちに「ホテルとして知床の自然保護に携わるアクションを起こせないだろうか」という思いがわいてきたんです。
世界自然遺産という地ながら、たいてい宿泊施設にはフードロスもあるし、アメニティも使い放題。宿泊料に見合ったサービスをすれば、ゴミも多く出るという課題があります。
そんなジレンマを社長や専務に話したところ、CSR活動として「クマ活」をやろうとしていることを話してくれました。
その後、語学留学を経て、経営戦略室での広報活動や「クマ活」の担当を任命されて、今に至ります。
「クマ活」で人とヒグマの環境を守る
─── 「クマ活」とは、どんな活動なのでしょう。
知床には、北米のベアカントリーに匹敵するくらいにヒグマが高密度に生息しています。
クマ活は、人間とヒグマが互いのテリトリーを侵さず、共存できる環境づくりを目指して昨年から始まりました。
例えば、草刈り。ヒグマが潜む可能性がある草むらを刈ることで、誤って人間の⽣活圏に⼊ってくることを防げます。昨年は5月から7月までの5回実施しました。
「やるべきだよ!」と言ってくれるスタッフも多くて、反応が良かった。
それぞれが知床への思いを培ってきた地盤があるから、SDGs的な考えもスムーズに受け入れてくれています。
ヒグマ自体、観光資源になっている側面もあるので、見たいと言う人は大勢いますが、近づきすぎることでヒグマの人慣れによる人身事故の可能性が高くなります。
地域の仲間と立ち上げたゴミ拾いプロジェクト
ポイ捨てされたゴミにヒグマが餌付くことも心配なので、プライベートでは昨年、地域の仲間と「知床ゴミ拾いプロジェクト」を立ち上げ、月1回ほどのペースでウトロでゴミ拾いもしています。
─── 私も参加させてもらったことがありますが、そのときは町内外から50人以上の参加者が集まっていて驚きました。地域の交流の場としても機能していますね。
そうですね。参加している社員が、地域の方々とつながる機会にもなっています。
世界遺産の入り口としてウトロがきれいになることは観光客にとっても私たちにとっても大事なことです。10年後にはゴミ拾いをしなくてもいい環境になっていてほしいです。
─── 宿泊業という観光の最前線の方々と、自然保護の場がつながっていくのは知床にとっても意義あることですね。
昔の知床は「秘境」のイメージでPRされていましたが、北こぶしリゾートの広報でも、サスティナブルな観光のあり方を模索しながら適切な形で伝えていきたいです。
例えば、ヒグマを守ることは、知床の自然を守ること。じゃあ、自然を守ることに繋がるのはどんな行動をすればいいのかな、とスタッフやお客様が自ら考え始めたときに、クマ活やゴミ拾いをやった意味が現れてくると思います。
─── どうもありがとうございました!
アットホームでありながら、プロフェッショナル。
三人のお話から、そう感じました。
ここは地のはて、知床。
もしかして、誰かにとっては一生に一度の滞在かもしれない。
だからこそ、自然のリアルを伝えたい。
それは、観光のおもてなしと両立できるはず。
知床の開拓時代、わずか5室の旅館から始まった北こぶしリゾートは、そんな思いとともに進化しています。
ホテルマンとしても、自然を愛する一人としても成長したい人は、ぜひ応募してみてください!
▼募集職種
接客スタッフ(ホテル接客業務全般)
▼業務内容
◎フロントサービス:フロントレセプション、客室案内、車両誘導、各種観光案内・手配、売店の運営、ラウンジの運営、等。
◎レストランサービス:ブッフェ、コース料理レストラン、宴会場等にて、お料理・ドリンクの提供サービス業務全般。
※入社当初は主に接客部門にてホテルの基本を学びながらご活躍頂きます。
一定の経験後には本人希望や勤務考課により他セクションへ部署異動もあります(調理部門は調理学校出身の方)。
◎調理業務:和・洋・中の調理、製菓、食材管理。
◎予約センター:電話対応、旅行会社対応、インターネット予約サイト管理等。
◎管理業務:施設管理・用度・経理・人事等。
▼必要書類
履歴書(志望動機・高校以上の経歴を記載、顔写真付き)
▼採用情報
◎勤務地:北海道斜里郡斜里町ウトロ
◎勤務時間:変形労働時間制。遅出・早出を含むシフト制。
・中抜けあり勤務シフトの一例:出勤7:00、休憩10:00~14:00、退勤20:00
・中抜けなし勤務シフトの一例:出勤9:00、退勤18:00
※いずれも勤務中休憩1時間あり
◎休日・休暇 年間公休数:115日
◎有給休暇:入社半年後10日・最高6年6カ月後20日付与
◎その他:家族・親族等の冠婚葬祭時、出産、育児等社内規定により休暇取得可
◎給与:月給18万円~
◎待遇:
《社会保険》健康保険・年金保険・雇用保険・労災保険加入
《福利厚生》定例表彰制度、産休・育休あり、社員寮あり(月額家賃11,000円~、水道光熱費は自己負担)、従業員食堂無料提供、退職金あり(入社4年以上)、社員旅行、グループ施設の優待利用
▼採用フロー
書類選考(応募から1週間以内) 〉 面談(リアルもしくはオンライン) 〉 内定
KEYWORD
中山よしこ(シリエトクノート)
北海道斜里町在住。札幌市からUターン後、地方紙記者を経て2011年に斜里町内の仲間と「シリエトクノート」を創刊(休刊中)。以後、DTPオペレーターとライターの傍ら、知床に来訪するアーティストとのアート企画「アーティスト・イン・シリエトク」や、移動古書店「流氷文庫」など、節操なく活動中。