「仕事」ではなく「暮らし」を大事にしたい。大企業から中札内村を選んだ夫婦に不安はなかったのか?
豊かな自然に囲まれた札内川園地キャンプ場の指定管理者として運営をしている株式会社AOILO。前編では、札内川園地キャンプ場の紹介やそこでのお仕事についてお話を伺いました。
後編では、中札内村で2020年12月に設立したばかりの会社、株式会社AOILOの2人が、なぜ地域おこし協力隊として神奈川県横浜市からやってきたのか?なぜ中札内村だったのか?など、2人のパーソナルな部分と、中札内村の暮らしについて、詳しくお聞きします。
20年後も想像ができてしまう道に、ワクワクできなかった
帯広駅から車で約30分、とかち帯広空港から車で約10分の場所にある中札内村。「花と緑とアートの村」と謳うだけだけあって、美術館や緑豊かな大きな公園がいくつかあり、音楽イベントなども行われるほど文化的な村です。村にある道の駅は人気で、平成28年度は十勝管内の道の駅で最も多い観光入込客数である68万人を記録しました。十勝に住んでいれば中札内村の良さは知っていますが、わざわざ神奈川県横浜市から移住してきた梶山夫妻の存在に、少し驚いてしまいました。どうして誰もが知っているような大きな企業を退職して、地域おこし協力隊として中札内村まで来たのでしょうか。そう尋ねると、智大さんは丁寧に説明してくれました。
「自分の父親が歴史ある大企業に勤めていたこともあり、会社員は将来安泰だという価値観のまま東海旅客鉄道株式会社(以下、JR東海)に就職しました。一生懸命仕事をし、それなりに楽しく過ごしていたのでそのまま会社員を続ける選択肢もありました。しかし30歳のころにふと将来のことを考えるようになったのです。20年後も想像ができてしまう道に、ワクワクできなかったんですね。大きな組織に守られながら生きていくのではなく、個人としてチャレンジをしたいなと思ったんです」
一方、AOILOのフード事業とワイン事業の責任者の千裕さんは「食で人の心を豊かにしたい」という思いから大学卒業後、食品輸入商社に勤め、チーズプロフェッショナルという資格を取得。仕事をしていく中で「現地で食の本質を知りたい」という気持ちが強くなり、フランスのリヨンやプロヴァンスに留学しました。帰国後はワイン輸入商社に入社し、ワインソムリエの資格も取得、生産者の思いを消費者に届けるために奮闘します。しかし、百聞は一見に如かずで、実際に現地に足を運ばないと分からないことが多くあることに直面し、「生産者の近くでその声を消費者に届けたい、消費者が現地へ来る架け橋になりたい」と強く思うようになったそうです。
「このままで人生良いのかな……」なんて思っていても、会社を辞めることはとても勇気が必要ですよね。千裕さんは、智大さんの考えをどう受け止めたのでしょうか。
ある日、智大さんから「北海道に行きたいから会社を辞めようと思う」と切り出されたそう。智大さんの中では、会社を辞めて北海道へ移住したい気持ちはかなり固まっていたと言います。
それに対して千裕さんは、「実は祖父母が釧路に住んでいることもあり、北海道は大好きなので、言われたときは楽しそう!と思ったんです。でも楽しいだけでは暮らせない。仕事のことや北海道での暮らしについては不安がありました。だから『本気で行きたいなら自分で納得するまで調べて、北海道で暮らすことの良さについて説明してください』と伝えました」
当時の智大さんの仕事は、転勤や単身赴任を伴うため、家族と暮らすための家を何年も不在にするのは自分が求める生活なのだろうか?退職したら北海道に移住してのんびりしたいと思っていたけれど、退職してからでいいのだろうか?そんな悩みを経て気づいたのは「仕事よりも暮らしを大事にしたい」ということでした。
千裕さんも「食の宝庫である北海道ならば、生産者と消費者の架け橋になることができるのでは」という思いがあり、2人の理想としている暮らしができる場を探すため、智大さんは2週間に1回のペースで十勝に通い始めました。
「お互いに晴れている場所が好きだったので、十勝にしようと決めました」と千裕さん。「十勝晴れ」という言葉があるように、十勝管内は年間を通じて晴れの日が多く、日照時間は年間2000時間を越え、北海道で一番晴れている時間が多い地域なのです。
でも、なぜ中札内を選んだのでしょうか?
「中札内村に初めて来たときに、目の前には畑が広がり、一直線に並ぶ防風林の遠くに日高山脈が見えるこの景色が、いいなと思ったんです。加えて、空港から車で10分なので東京までのアクセスが良いですし、ビジネスとしては大きなアドバンテージだと思いました。それに、大好きな六花亭があるのも魅力でしたね(笑)」
暮らしを大切にしながら、自分たちのこれまでの経験を生かして新しい事業を創造していきたいと考えていた智大さん。そう考えると、中札内村の豊かな自然や、美しくのどかな景色のなかでの暮らし、首都圏とのアクセスの良さ、村内民間企業の活躍など、2人の求めるものと一致していました。加えて中札内村には、中札内産生乳を使ったチーズやジェラートを製造販売する「十勝野フロマージュ」があり、銘柄鶏や枝豆などの農畜産物が豊富な食の宝庫です。元々、ワインやチーズの輸入の仕事をしていた千裕さんの経験が活かせそうな場所でもあったのです。
智大さんの勧めで共に訪れた千裕さんも中札内村をすぐに気に入りました。タイミングよく中札内村で地域おこし協力隊の募集をしており、2人で決意して応募しました。
中札内村は理想の暮らしと、ビジネスのポテンシャルを秘めた土地
中札内村地域おこし協力隊になり、中札内村の観光振興プロデューサーとして2018年から2年半活動してきた2人。着任後、村から言われたお題は「観光振興プロデューサーとして、これまで誰も思いつかなかったようなことにどんどん挑戦してほしい」ということ。つまり、取り組む内容が明確に決まっておらず、自分たちで考えて実行するフリースタイルということでした。「できるだけ早く自分たちで進む方針を示し、行動する姿を見てもらいたいと考えました」と智大さん。とにかく分かりやすい結果を出すことが大事だと考え、中札内村の名前を広く知ってもらい、足を運んでもらえるような話題性のあるプロジェクトに取り組みます。
それが、スノーアートと、桜六花公園のイベントプロデュースでした。
スノーアートとは、雪の積もった広大な畑の上を歩き、その足あとによって巨大なアートを完成させるものです。智大さんがスノーアーティストとして一人で作品を作り上げ、「スノーアートヴィレッジなかさつない」というイベントを企画・運営。冬の新たな魅力を生み出し、多くの人が冬の中札内村に訪れました。
「FETE DE SAKURA Nakasatsunai」は、六花亭製菓から寄贈された約1000本のエゾヤマザクラが咲く桜六花公園にて、桜が満開の時期に行われているお祭りです。十勝で大人気の飲食店やキッチンカーが集まり、桜の下でのジャズコンサートが行われたこのイベント、1年目はなんと、5000人もの人が訪れたそう。中札内村の人口が約4000人だということを踏まえると、ものすごいことですよね。
「本当にやりたいことを全てやりました。私たちの提案を受ける観光協会や役場の人は大変だったと思いますが、やりたいと相談したら協力してくれて、そのバックアップがあったからこその2年半でした」と千裕さん。智大さんは、「役場や行政、中札内村のことを何も知らなかったから挑戦できたんだと思います」と振り返ります。
「地域おこし協力隊を経て、僕自身、人の笑顔を生み出すとか、役に立つとか喜んでもらうのが、リアルな距離感で経験することができたのは大きいと思っていて。そういう喜びや笑顔を想像して、創造できる会社でいたいと思います」
これから続くAOILOの挑戦
まだまだ世の中には、都会の大きな会社で働く方が優れているという認識があるように思います。実際に都会の大きな会社で働いてきたお二人に、中札内村で働くということをどのように捉えているか質問をしてみました。
「移住しなかったら経験できなかったことが多くあるんです。会社にいると外に目を向けているつもりでも、どうしても視野が狭まりやすいですよね。JR東海特有かもしれませんが、会社の価値観や仕組みが全てだと思いがちだったなと思います」と智大さんは言います。
「私たちのAOILOは、まだまだひとつの事業を作り上げていく段階です。様々なことが出来上がっている大きな組織の会社員とは違い、1人1人がプレイングマネージャー的に動いて考えながら仕組みも働き方も作っていく。覚悟を持って、実行していくことができると思います。それを積み上げた経験は、また都会に戻っても役に立つと思いますし、自分で起業してもいいと思います。AOILOに入社すれば、色んなことに挑戦しながら会社を大きくしていくのを間近で見ることができます。一緒に経営する目線で、一緒に経験していきたいですね」
【おまけ】中札内村ってどんなところ?
AOILOに興味を持ち一緒に働きたい!と思う方の中にも、きっと中札内村をよく知らないから不安…という方もいらっしゃると思います。そこで!実際に神奈川県横浜市から移住した智大さん・千裕さんに、「中札内村ってどんなところ?」という質問をしてみました!
ー 中札内村はどんな村でしたか?
智大さん「豊かな自然に溢れていて、ふとしたときに眺める景色や何気ない景色が心地いいです。もう移住して3年目が過ぎましたが、その景色が当たり前になっていくのが怖いなと思いつつ……当たり前になる幸せも感じています」
ー 暮らしやすいですか?
千裕さん「車で2〜3分走っただけで多くの人が想像する『THE北海道』な雄大な景色が飛び込んできます。ですが、すぐ近くにスーパーもあるし、コンビニは3つあるし、道の駅や観光施設やホームセンターもあって便利です!中札内は生活のしやすさのバランスが凄く良いと思います。自然があるので息抜きもしやすいです。ほかにも、Amazonは購入してから2日後には届きますし、空港まで車で10分ですし、役場は並ばないので昼休みに行っても5分で終わります。都会では考えられないほど、豊かな生活です。横浜にいたときよりも、ある意味便利で快適な生活をしていると思います」
ー よく北海道は食が魅力と言われますが、実際どうですか?
千裕さん「食事は本当に美味しいですよ。道の駅の直売所で旬の野菜が売っていたり、スーパーで購入するお肉やお魚も地元産の新鮮なものが並んでいます。お隣に住む農家さんから採れたての野菜をいただいたりもして。都会ではなかなかできない、北海道ならではの『贅沢さ』があると思います」
ー ご近所付き合いはどんな感じですか?
智大さん「程よい距離感で接してくれて、いい人ばっかりです。取引のある事業者さんも優しいし親切で、私達のことを気にかけてくれて応援してくれます」
千裕さん「中札内村は移住者が多いので、村外から来た人に寛容です。特に観光地としても人気なので道外の人に対する耐性があって、受け入れる文化が出来上がっていると思いました」
いかがでしたか?
実は、私が十勝に移住する際に候補地として最後まで残ったのが中札内村でした。いまは近隣の大樹町に住んでいますが、お二人と同じように都会から十勝に生活の拠点を変えて楽しく暮らしています。
たった一度の人生です。
自分の思い描く挑戦を、豊かな自然と隣り合わせで暮らし、あなたの人生に新たなカラーを増やしませんか?
あなたの暮らしに彩りを。
自然の豊かさを共に伝えていきたい、大自然が隣にある暮らしをしていきたいという方、ぜひご応募や見学をお待ちしております。
募集要項 札内川園地/日高山脈山岳センター・キャンプ場
▼募集職種
副責任者(将来の責任者候補)、広報スタッフ、運営スタッフ
▼札内川園地のスタッフの業務内容
・フロントサービス:キャンプ場、日高山脈山岳センターでのインフォメーション、観光案内、施設案内、展示案内、レンタル品の貸出、売店の運営等
・レンタル品(キャンプ道具、自転車、寝具等)のメンテナンス、管理
・宿泊施設(バンガロー、トレーラーハウス)、関連施設(トイレ、炊事場)等の清掃、整備
・予約対応(予約サイト管理、メール対応、電話対応等)
・各種イベントの企画、運営、広告宣伝等
・ホームページやSNSの更新
・その他、中札内村役場、観光協会との連携業務
など
採用職種により、業務内容の割当、担当が変わりますが基本的には全員に一通りの業務を経験していただきます。
▼応募資格
<必要なスキル>
・PCの基本操作(ワード、エクセル、パワーポイント)
・普通自動車運転免許
<歓迎スキル>
・illustrator、photoshopなどでのデザイン作成、編集
・website(wordpress)の作成、編集
<歓迎経験>
・自然にかかわる仕事の経験
・広報、企画、イベント運営などの経験
・接客経験
・管理者経験 など
▼採用情報
◎勤務地:北海道河西郡中札内村南札内713 札内川園地/日高山脈山岳センター
◎勤務時間:日勤・遅出・早出、宿直を含むシフト制。
・日勤シフトの一例:出勤8:30、退勤17:30
・遅出勤シフトの一例:出勤12:00、退勤20:00
・早出勤シフトの一例:出勤7:00、退勤16:00
・宿直:20:00~7:00
※休憩は労働基準法の定めによる。
◎休日・休暇 週休2日、各月の土日祝日相当数の休日を付与
◎有給休暇:入社半年後7日を付与
◎その他:家族・親族等の冠婚葬祭時、出産、育児等社内規定により休暇取得可
◎給与:月給18万円~
◎待遇:
《社会保険》健康保険・年金保険・雇用保険・労災保険加入
《福利厚生》交通費規定支給・宿直手当支給
◎勤務期間:
札内川園地(4月~11月)、AOILO本社(12月~3月)
本人の希望により、季節雇用、通年雇用、副業などフレキシブルに対応いたします。
(2021年Aさんの場合:4月~11月札内川園地勤務、12月~3月別の場所でアルバイト、2022年4月札内川園地復帰予定。Bさんの場合:月火水を別の仕事、金土日を札内川園地にて勤務)
◎勤務開始時期:
2022年4月1日を予定
▼応募・採用フロー
まずはメール(info@aoilo.com)をお送りください。
↓
メール到着後1週間以内に簡単なエントリーシートを添付し、返信いたします。
↓
エントリーシートをご返信ください。
↓
面談(リアルもしくはオンライン)1回または2回
↓
内定
株式会社AOILO
SNS:Instagram、Facebook
フード事業:Instagram
アウトドア事業(札内川園地キャンプ場):Instagram、Facebook
KEYWORD
梶山智大
静岡県出身。信州大学大学院修了。JR東海で8年半、主に超電導リニア中央新幹線の車両開発・設計を担当。日常的に500㎞/hの走行車両に乗車し、各種計測や試験を担当、車内艤装、各種車体装備の実用化に貢献、ギネス記録の603㎞/h走行試験に責任者として乗車。2018年10月より中札内村地域おこし協力隊観光振興プロデューサー、スノーアーティストとしてスノーアートヴィレッジなかさつないを企画・運営、各種メディアにて紹介される。2021年3月卒業。現在は、2020年12月に設立した株式会社AOILOの代表取締役として、2021年4月より札内川園地を指定管理者として運営するほか、フード事業、イベント事業などを行う。
梶山千裕
神奈川県出身。早稲田大学卒業。ワインやチーズの輸入商社に勤める。株式会社日食時代は銀座三越の自社直営輸入食品店にて店長を経験。パシフィック洋行ではワイン部インポーターとして毎年イタリア、フランスなど生産地に足を運び、買付の他、生産者との親睦を深め、現地の食文化を取り入れたワインブランディングを得意とする。2018年10月より中札内村地域おこし協力隊としてFETE DE SAKURANakasatsunaiをプロデュースし来場者5,000人を集めたほか、各種メディア(TV,ラジオ、出版社など)への広報、宣伝を担当。現在は、株式会社AOILOのフード部門の責任者を務める。CPA認定チーズプロフェッショナル、JSA認定ソムリエの資格を有する。
岡山ひろみ
札幌市生まれ。早稲田大学卒業後、東京のIT企業で7年働き、札幌にUターン後、東京のスタートアップの北海道拠点で働き、フリーランスに転向。拠点を北海道大樹町に移し、STARTUP CITY SAPPORO編集長、そのほかメディアでのライター活動、札幌産業振興財団インタークロス・クリエイティブ・センターにてクラウドファンディングアドバイザーとして活動中。
mail:hiromi.okayam@gmail.com
s film memories (Samuel/Sae)
十勝エリアを拠点とした夫婦によるクリエイターユニット。十勝で育ち、心温まる映像と写真で実績を積み重ねてきたSamuel。東京で作品撮り・モデル撮影をし、結婚を機に十勝に移住したSae。それぞれ異なる感性と着眼点でシャッターを切る。ジャンルを問わず写真撮影、動画制作を行う傍ら、若手ビデオグラファーのオンラインコミュニティも運営。