自然を活かした地域づくりをする〜阿寒摩周国立公園ではたらく!
こんにちは、オホーツクの美幌町で農業とライターをしている百目木(どめき)です。
オホーツクは朝晩が冷え込む季節を迎えました。紅葉が見頃を迎える今時期は、自然の中へ出かけたくなります。北海道には、国立公園が6カ所もあるので、少しドライブするだけで、豊かな自然を楽しむことができます。
今回の#道東ではたらくは、その中の1つ「阿寒摩周国立公園」が舞台です。
この公園は、2016年から「国立公園満喫プロジェクト」に採択され、地域住民と環境省が手をとり、自然を活かした地域づくりが進められています。
今回は阿寒摩周国立公園の魅力や、プロジェクトの概要と展望について、環境省 釧路自然環境事務所 阿寒摩周国立公園事務所 所長の笹渕紘平さんにお話を伺いました。
また、現地で活躍する環境省のレンジャーの活動を支える「アクティブレンジャー」というお仕事についても紹介します。
環境省 釧路自然環境事務所では、一緒に働く仲間を募集しています
所属する地域により、アクティブレンジャーの業務が一部異なりますので、ご確認・ご理解の上、ご応募ください。
<募集概要>
<募集要項>
<応募書類の受付期間>
以下の2つの採用パターンがあり、応募書類の受付期間が異なります。詳細は募集要項をご確認ください
11月採用の場合:2021年9月15日(水)~2021年10月6日(水)
12月採用の場合:2021年9月15日(水)~2021年11月2日(火)
(いずれも14時必着)
<こんな方におすすめ>
・自然が好きな方(専門的な知識はなくても大丈夫です)
・地方で自然を活かした地域づくりに関する仕事をしたい方
・地域住民とのコミュニケーションを積極的にできる方
・自然を活かしたアクティビティや環境教育プログラムの開発に興味がある
変わり続ける大地と奇跡の時を生きる私たち
道東の中央部にある「阿寒摩周国立公園」は、北海道で一番最初に指定された国立公園の1つです。阿寒湖、摩周湖、屈斜路湖という3つのカルデラ湖が近接し、全国的にも珍しい地形をもつことで知られています。
現代に見る湖は静寂そのものですが、この地形は山頂付近が崩壊するほどの爆発的噴火の痕跡であり、大規模な火山活動がこの地にあったことを物語っています。
この公園は大きく2つのエリアに分かれています。1つは西側の阿寒エリアです。かつてこの地は巨大なカルデラ湖に覆われていましたが、長い年月をかけ、周囲の火山活動により湖が埋め立てられていきました。マリモで有名な阿寒湖や、パンケトーやペンケトーといった神秘的な湖沼群は、その湖の名残であり、雄大にそびえる雌阿寒岳や雄阿寒岳は当時の火山活動で生まれた山々です。また、阿寒湖畔にはアイヌコタンがあり道内の国立公園の中でも唯一アイヌの文化を深く感じることができます。
もう1つは東側の「摩周(川湯)エリア」です。大規模な火山活動が連続し、3万年前までには、屈斜路カルデラが、3000年前までには摩周カルデラが形成されました。その間には、今なお噴煙を上げる硫黄山や、川湯温泉街など、大地のエネルギーを感じる多くのスポットがあります。
100万年以上続いたこの激しい火山活動が沈静化したのは、つい1000年ほど前のことだと考えられています。長い地球の歴史の中で、この地に美しい山々や静寂な湖、そして豊かな原生林と生態系を見ることができるのは、奇跡的なひとときなのかもしれません。
自然を活かした地域づくりのパートナーへ
かつて阿寒摩周国立公園は、豊かな自然と温泉を目当てに年間約786万人が訪れる一大観光地でした。しかし、1999年以降利用者数は減少、近年ではピーク時の1/2弱にあたる356万人程度に留まっています。そんな中、インバウンド獲得による経済効果を狙った「国立公園満喫プロジェクト」が2016年に開始されました。
日本の「国立公園」を世界に通用する「ナショナルパーク」にするために、全国8ヶ所の国立公園が先行的・集中的にインバウンド対策に取り組むことになり、この国立公園も選ばれました。
当時、霞ヶ関の本省に在籍していた笹渕さん。始まったばかりの満喫プロジェクトの担当に任命されます。
笹渕さん これまで環境省は、国立公園の自然保護のために開発規制をすることが中心だったため、インバウンドのための利用促進と言われても何をしていいかわかりませんでした。
そこで国立公園内の観光推進に興味がある民間企業の皆さんに話を聞いて回り、現場の担当や自治体担当者とも相談しながら何がができるのか検討し、プロジェクト全体の方針を示す仕事をしていました。
2018年からは現職に就き、国立公園での暮らしがスタートしました。しかし、地域の方たちと交流する中で、国と地域との考え方にギャップを感じ始めました。
笹渕さん「地域が国立公園に求めているのは、単にインバウンドを増やして経済活性化をすることではなく『自然を活かした豊かな地域を作りたい』ということだったんです。
笹渕さんは、地域の方たちが思い描く未来を実現するために、よりよいやり方や成果を模索し始めました。
本気の姿勢が地域を前向きにする
その1つが川湯温泉の再生です。この温泉街はかつて年間56万人が宿泊した道東屈指の観光地でした。しかし、現在は利用客が1/5以下に減少、いくつもの廃施設が景観の阻害となり、新たな投資の妨げとなっていました。笹渕さんの就任以前から、満喫プロジェクトの予算で1棟の廃屋を撤去する計画が進んでいました。
しかし笹渕さんは、1棟だけでは不十分だと感じるようになります。「1棟分では敷地も狭く、さらに隣接する廃屋が景観を邪魔するため、民間投資による活用が進むイメージ湧きません。本気で地域の未来を考えるなら、さらなる廃屋の撤去が必要だと考えました」。笹渕さんは本省への説得を繰り返し、その結果、2棟目の廃屋撤去の予算が確保ができました。
そんな笹渕さんの姿勢に地域の心も動かされていきます。住民の自主的な地域づくりが加速していったのです。
例えば、町の温泉川にはかつての宿泊施設から廃棄されたゴミが大量に埋もれていましたが、現在、清掃活動が継続して行われています。遊歩道の整備や、外壁のペンキ塗りなど、町を一歩ずつ前向きにする様々な取り組みが行われています。
「地域」の価値を可視化するトレイル構想
自然の保護と利用のバランスをとりながら、持続可能な世界水準の観光地づくりを目指す「国立公園満喫プロジェクト」。その重点的な取り組みの中に「阿寒摩周国立公園トレイルネットワーク」の推進があります。
道東には女満別空港、中標津空港、釧路空港の3つの空港があり、阿寒摩周国立公園はその中央に位置しています。この立地を活かし、空港間をトレイルコースで結ぶ計画を進めています。
笹渕さん 本公園は道東交通の要所となる道路が通っていることからアクセスが良い反面、バスや車で観光スポットを次々と回る通過型の観光になっているという課題もあります。本当は各地にゆっくりと立ち寄って十分楽しめる懐の深さがあるのです。
自分の脚でゆっくり回ることで、初めて見えてくる風景や、地域の人たちとの出会いなどもあります。
笹渕さん「観光スポットという「点」だけではなく、移動という「線」を楽しむことは、そこに地域の存在や新しい価値を感じることでもあります。
さらにトレイルを楽しむ旅行者の存在は、住民にとっても、自分の地域に誇りをもつことにつながるのではないでしょうか」
笹渕さんは未来を見つめます。
国立公園満喫プロジェクトはインバウンドを狙った観光対策として始められましたが、「自然と共生した持続可能な地域づくりの先端的な事例を世界に示すことでもある」と笹渕さんは考えています。
国立公園に暮らす人たち、そして笹渕さんたちと一緒に、あなたもこの取組に挑戦しませんか?
アクティブレンジャーのお仕事
これまで阿寒摩周国立公園の魅力や、国立公園満喫プロジェクトの目指す方向性、笹渕さんの想いなどについてご紹介させていただきました。ここからは、国立公園管理事務所で働くアクティブレンジャーについてご説明します。
<アクティブレンジャーとは>
国立公園管理事務所に所属する笹渕さんらレンジャー(自然保護官など自然の現場ではたらく環境省職員の総称)は、事務仕事や会議などが多く、野外の現場に出る機会が限られています。そこで、レンジャーに代わり、施設の巡視、利用者の指導、危険箇所の確認、ガイドや地域の方とのコミュニケーションを通した情報交換などを行うのが、アクティブレンジャーの重要な役割です。
今回、5月からアクティブレンジャーとして働いている武山栞さんの散策路巡視に密着しました!
武山さん こんにちは!武山です。現在大学の4年生を休学してアクティブレンジャーとして働いています。
───どのようなきっかけでアクティブレンジャーになったのですか?
武山さん 農学部の森林科学科に在籍しています。将来は環境に関する仕事に就きたいのですが、その前に現場を知りたいという想いに駆られました。大好きな道東でそのような仕事を探した所、環境省からアクティブレンジャーの募集が出ていることを知り、エントリーしました。
───今日はこれからどんなことをするのですか?
武山さん 実は明日から、満喫プロジェクトの一環で「川湯の森ナイトミュージアム」というイベントを行います。夜間の森の中に様々な展示を行い、自然の博物館として楽しんでもらう予定です。今日はその散策路を巡視し、危険な場所がないか点検を行います」
───今何を撮られたんですか?
武山さん イスの脚に破損を確認したので状況を記録しました。こういった危険箇所の見分け方は、着任後、レンジャーの皆さんからしっかりと教えてもらいます。利用者にとって危険な木を伐採したり、設置された施設に不備がないか確認することもあります。
武山さん 他にも、地域の皆さんとの意見交流や、他地域での観光開発の取り組みなどについてのヒアリングを行うこともあります。
───現場の状況を把握し、レンジャーの目、耳になることで、プロジェクトを推進する重要なお仕事ですね。国立公園の自然を楽しむために、アクティブレンジャーの皆さんが陰で活躍していることがわかりました。今日はありがとうございました!!
—–
「国立公園で働くレンジャー」と聞くと、自然と向き合っているイメージが強いかもしれませんが、実は地域と向きあう仕事だということが今回の取材でよくわかりました。今回募集するアクティブレンジャーは、環境省版の『地域おこし協力隊』のイメージが近いかもしれません。
自然を活かした地域づくりに興味がある方は、ぜひお申し込みください!
現在阿寒摩周国立公園で活躍する先輩アクティブレンジャーの活動の様子は、こちらからもご覧いただけます。
環境省 釧路自然環境事務所では、一緒に働く仲間を募集しています
所属する地域により、アクティブレンジャーの業務が一部異なりますので、ご確認・ご理解の上、ご応募ください。
<募集概要>
<募集要項>
<応募書類の受付期間>
以下の2つの採用パターンがあり、応募書類の受付期間が異なります。詳細は募集要項をご確認ください
11月採用の場合:2021年9月15日(水)~2021年10月6日(水)
12月採用の場合:2021年9月15日(水)~2021年11月2日(火)
(いずれも14時必着)
<こんな方におすすめ>
・自然が好きな方(専門的な知識はなくても大丈夫です)
・地方で自然を活かした地域づくりに関する仕事をしたい方
・地域住民とのコミュニケーションを積極的にできる方
・自然を活かしたアクティビティや環境教育プログラムの開発に興味がある方
百目木(どめき)幸枝
青森県八戸市出身。秋田県立大学、北海道大学院修了後、東京の研究開発ベンチャーで8年働き、2019年夫婦で退社&息子出産&北海道網走郡美幌町で農業研修開始。2022年の就農に向けて「さいこうファーム」の設立準備中。夫婦で編集執筆ユニット「再考編集室」を結成し、地域や人の豊かさを日々発信しています。
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