REPORT

心に幸せの灯りを灯す星空イベント「スターライトアカリウム」

北見市留辺蘂町温根湯温泉ゆめ広場付近

2025年7月25日〜27日、北見市留辺蘂町温根湯温泉で「スターライトアカリウム」が開催されました。このイベントは、まちの灯りを消して星空やキャンドルの光を楽しむことをテーマにしたもので、キャンドルづくりワークショップやキャンドルナイトコンサート、星空観察会が行われました。

今回は私、東京農業大学2年の荒明風香が体験した、幻想的な光と音、夜空の美しさに包まれた心温まる「スターライトアカリウム」のイベント最終日の様子をレポートします。

想いをこめた私だけのキャンドル

18時から行われたキャンドルづくりのワークショップでは、「いとをかしCANDLElab」の吉本隼(よしもとじゅん)さんをインストラクターに迎え、キャンドル作りを体験しました。会場に到着すると、スタッフの方の優しい出迎えがあり、開始するまでに他の参加者の方も巻き込んでもたくさん話しかけてくれて、とても和やかな雰囲気でした。

今回のワークショップでは、体験料金1,000円でキャンドルを2つ作ることができます。1つはお持ち帰り用、もう1つはコンサート会場のステージの装飾用です。コンサート会場用のキャンドルは、まずガラスの瓶に割り箸を渡してキャンドルの芯を安定させ、配られた「ろう」に青の染料で色をつけた後、瓶に流し込んで完成というシンプルな工程で、初心者でも安心して作ることができました。お持ち帰り用のキャンドル作りでは、9色のろうから好きな色を選んで、芯がささった紙コップに溶かしたろうを流し込んで作ります。

私はピンクと青と紫を使って、「儚さと優しい柔らかさ」をテーマにデザインしました。完成したキャンドルは、とても可愛くて満足のいく仕上がりでした!インストラクターの方やスタッフの方が、一つ一つの作業を丁寧に教えてくれ、出来栄えの確認もしてくれるので、楽しんで作ることができました。

他の参加者の方も「人生で初めてのキャンドル作り体験で、自分だけのキャンドルを作ることができてすごく嬉しかった」「形に残る素敵な思い出になった」など満足そうな様子がうかがえました。

またキャンドルづくりに参加した方には、近くの大江本家の温泉無料入浴券が付いてくるという嬉しい特典があり、私も温泉に入ってきました。当日は、気温が低く小雨が降っている寒い日だったので、心も体も芯から癒されるとても素敵な時間を過ごすことができました。

暗闇と灯りのゆらめきの中で響く音色

キャンドルづくりのワークショップのあとは、温泉ゆめ広場で行われるキャンドルナイトコンサート。会場に着くなり、キャンドルに囲まれたステージが目に入りました。ビックキャンドルや、3日間を通して参加者が作った色とりどりのキャンドルが飾られており、初日よりも数が増えていて、まるで光の海のようでした。会場には小さな椅子が整然と並べられ、ステージを邪魔しないよう工夫されていて、どこからでも見やすい設計になっています。

また、27日には「黒桜牧場みかづき亭」さんのキッチンカーが出店していました。私もホットミルクといちご牛乳をいただき、温かい飲み物で一息つきながら会場を楽しみました。

カウントダウンとともに照明が一斉に消えると、キャンドルの灯りが一段と際立ち、ステージだけでなく会場全体が温かい光に包まれていました。小雨が降っていたこともあり、濡れた地面に反射する灯りが幻想的で、風に揺れる炎が柔らかく、心をそっと包んでくれるようでした。普段では味わえない静けさと美しさに、癒されるひとときでした。

コンサートはインストゥルメンタル(歌声がない、楽器による演奏のみ)で、地元アーティストのマキノモトヤさん・長谷川仁美さん・Oconcoloさんの3組が出演。それぞれが異なる楽器と音の世界を持ち寄り、キャンドルに囲まれた幻想的な空間で、多彩な音色を奏でていました。

マキノモトヤさんは、ギターでの演奏で、とてもやわらかい音色が印象的です。優しく心に寄り添ってくれるような演奏で、キャンドルと会場の雰囲気にあっていて、オリジナルソングの穏やかな旋律が夜の静けさと溶け合い、心がゆっくりと落ち着いていくのを感じました。

琴による演奏で、「風鈴」「まりつき」「六段の調」の3曲を披露した長谷川仁美(はせがわひとみ)さんは、日本の情景を感じるとても素敵な演奏で、繊細で透き通るような音色でした。普段なかなか聞くことの少ない楽器ですが、優雅さが特別な深みを出していて、会場にまた違った空気を生んでいました。

Oconcolo(オコンコロ)さんは、民族楽器を使って、南米の音楽を演奏するグループです。ギター、チャランゴ、ケーナによる「夜の蝶」「星に願いを」「人々の悲しみ」の3曲を披露してくださいました。異国の風景が浮かぶような音の流れと、力強い音色から優しい音色まで、幅広い音を楽しむことができました。

会場全体が音楽に静かに耳を傾け、誰もがそれぞれの想いを胸に、音に包まれる時間を楽しんでいる様子が印象的でした。演奏とともにゆらめくキャンドルの光が、視覚と聴覚の両方に優しく寄り添い、音と光が語り合うような時間。キャンドルの灯りを側で感じて聴く音楽は、コンサートホールとはまた違った魅力があり、心が解きほぐされる感覚がありました。

見えない星を想像して

21時からの星空観察会は生憎の雨で中止となったため、北見天文同好会の山中さんによる星の解説を聞かせていただきました。夏の大三角を構成している星座のお話から始まり、北海道で見られる低緯度オーロラや天の川のお話がありました。もし晴れていれば、ステージの反対側に天の川が見えていたそうで、ぜひ見てみたかったです…!イベント初日は天気に恵まれ、実際に望遠鏡で星を見ることができたらしいので、次回のイベント開催が決まったら、ぜひリベンジしたいと思います!

観察会では、星を撮るおすすめのカメラやスマートフォンでの撮影方法も学びました。実際に山中さんが撮った写真を見て、「今は見えないけれど、雲の向こうにはたくさんの星空が広がっているんだろうなあ」と思いながら、楽しくお話を聞かせていただきました。普段何気なく見ている星も、新たに知識を得ると、また違う感覚で眺めることができます。北見市にはプラネタリウムもあるので、天気が優れない日には、室内で星に触れるのもいいなと思いました。参加者の方からは「星空は見ることができなかったけど、音楽の優しい音色とキャンドルの光が心地よくて、特別な時間を過ごせた。静かな空間でとても心地よかった」という声がありました。

発案者のイベントへの思い

最後にこのイベントの発案者で副実行委員長の佐々木雄一さんにお話を伺うことができました。

「本来人間の文明がなければ、町は暗いのが普通で、星がすごく綺麗な状態。自然を綺麗だと感じるような、“忘れていたものを思い出す” 時間が、人間の生物としての大事な部分を取り戻してくれるんじゃないか。そう思ったのが、このイベント開催のきっかけです。

『日本三選星空名所』の中の沖縄の石垣島に行った時に、温根湯の星空も石垣島に負けていないと感じ、観光資源として活用するべきだと思い立ちました。さらに地元のアーティストが活躍できるコンサートとキャンドルナイトを、ライトダウンに掛け合わせたらいいんじゃないかと考えたんです。

温根湯は大きな国道沿いでアクセスも悪くなく、温泉や山の水族館、キツネ牧場のような観光地もあるし、他に真似できないオンリーワンのまちづくりができる。そして地域の皆さんも、町に段々と人が少なくなり寂しくなってきている中で、地域を盛り上げたいという思いを持っています。このイベントを定期開催できるようにしていきたいし、着地型観光プランとして地域が元気になるような形にしていきたいんです。どことなく閉塞感がある世の中を打開して、星空を見上げながら人の幸せって何なのかを、ちょっと考え直す。こういうイベントをきっかけに、そんな大切な時間が、どんどん広がっていくといいなと思っています。」

終わりに

今回、星を見ることはできなかったけれど、幻想的なキャンドルの灯りから始まって、音楽で癒されて、こういう時間の流れも大切だなと感じました。この記事を通じて少しでも皆さんにその雰囲気が伝わって、今後の温根湯のイベントにも足を運んでもらえると嬉しいです!

また私も、地元の地域活性につながるイベントに積極的に参加して、地元にある良さをたくさんの人に知ってもらえるよう貢献していきたいと思います。

筆者プロフィール

荒明 風香(あらあけ・ふうか、東京農業大学2年)

福島県出身。網走市在住。スターライトアカリウムという素敵なイベントがあると聞き、最終日に参加しました!自然と触れることが好きで、ついつい写真を撮り過ぎてしまいます。星も好きなので、天気のいい日には外をずっと眺めて過ごしています。

スターライトアカリウムInstagram

写真撮影:アラタ ジュン / 八幡 和志 / 荒明風香