COLUMN

多くの仲間と地図に残る建物を作るプロフェッショナル〜建築の仕事〜

#道東ではたらくの新シリーズ 「#美幌ではたらく powered by 美幌建設業協会」。
美幌町建設業協会の代表的な5業種で働く方への取材を行い、それぞれの業種の役割や働く人の思いについてお伝えしていきます。

 第三回目の業種は「建築業」です。
美幌町で創業71年を迎える株式会社三共後藤建設の総務部次長の小西順(こにしじゅん)さんと、建築部主任の畠澤元希(はたざわげんき)さんに、建設業のお仕事内容と、やりがいについてお話を伺いました。

規模が大きい総合建築業

 株式会社三共後藤建設は、美幌町に本社、北見市に本店、札幌市と遠軽町に支店を置き、道内各地の様々な建築物を手掛けています。

 官公庁などの行政施設の建築はもちろん、衣料品チェーンストア「しまむら」やスーパーマーケットを展開する「北雄ラッキー」など民間企業からの依頼も数多く受けています。

▲「北海道は一次産業が盛んな地域ということもあり、農業や漁業に関連する施設も
数多く手掛けています」とお話する小西さん。現在、安全管理の仕事を担当されています。
▲例えば、オホーツク管内14農協が団結して設立した大空町の
オホーツクビーンズファクトリーも三共後藤建設が施工を担当しました。

 総合建築業の仕事は、地面の下の基礎工事から、建物、そして、快適に利用できるように各種インフラの整備など様々な業種にまたがっています。三共後藤建設では、現在社員数43名。社員の皆さんは現場監督を仕事にしており、多くのヒト・モノ・カネの管理をしながらプロジェクトを進めています。

職人から現場監督へ

 今回お伺いしたのは、津別町のコミュニティ施設の新築工事現場です。津別町の中心地、役場の横に位置しています。竣工したあとは多くの町民の皆さんの交流の場となる建物です。現在は基礎工事の最中で、職人の皆さんが忙しく作業をされていました。

▲工期は10ヶ月、請負金額は約10億円、出入り業者も数十社を越えるそうです。

 今回のような規模の現場では、最終責任者となる現場所長が1名、現場監督が2名の合計3名体制で全体の管理を行っています。

 その現場監督の1人、北見市出身の畠澤さんは現在28歳。三共後藤建設に入社して5年目の若手ですが、一級建築施工管理技士補の資格を取得し、ご活躍しています。

 「…実はもともと建築に興味があったのではなく、友人が紹介してくれたんです」と答える畠澤さん。高校卒業後、少ししてから、建築物の外壁の隙間を埋めるコーキング職人になったそうです。4年働き、転職を考えていた際に、知り合いに声をかけてもらったことがきっかけで三共後藤建設に入社しました。

▲畠澤さんは先程紹介したオホーツクビーンズファクトリーの施工にも関わるなど、
様々な現場で経験を積んでいます。

着工から竣工まで

 規模が大きいだけに、イメージが湧きづらい建築の仕事。具体的にどのような流れで工事は進んでいくのでしょうか。
 まずは、設計事務所などにいる一級建築士が、建物の設計図を作成します。これを元に、施工図を起こすところから建設会社の仕事は始まります。施工図とは、設計図をより詳細にしたもので、例えば、梁1本にしても高さ、幅はもちろん、天井から床までの長さなどが記載されています。施工図を起こすのが1名、その後複数人でチェックを行います。
 「僕はまだこの業務を担当したことはありませんが、今後の目標の1つです」と畠澤さんは意欲をにじませます。

▲施工図にはびっしりと様々な情報が。その詳細さに驚きました。
「昔は全部手書きだったんですが、今はすべてパソコンで作成しています」と小西さん。

 その後、施工図を元に「コンクリートをどのくらい使用するか」など、材料の数量や金額などを一覧にした内訳書を作成します。内訳書が完成することで、ようやく機材や人材の手配に進むことができるため、着工までには1〜数ヶ月かかるそうです。

 着工後は、様々な業者が毎日入れ替わりやってくるため、現場監督は、数多くの打ち合わせを行いながら、作業を指示していきます。天候等を考慮した作業工程作りや、作業員、物資の手配等、安全管理、作業内容が図面通り行われているか様々な手法で計測する品質管理、そして現場写真として記録に残して、報告書にまとめていく作業を並行して行います。これを竣工まで繰り返し、工事全体を管轄していきます。役場など大きな建物では全体で工期が2年に渡るものもあるそうです。

▲手元の施工図を確認しながら、コンクリートが図面通りの寸法であっているか確認します。
建物の高さや、作業の基準点などは、測量をして確認を進めるそうです。

困難もあるけれど、大きなやりがいが待っている

 建築業の魅力に気がついたきっかけは、入社して4ヶ月頃に担当した釧路での仕事だったと畠澤さんは振り返ります。

「現場所長のお手伝いとして、民間企業の物流倉庫と冷蔵庫を新築する工事に関わりました。職人時代は仕上げの工事に関わることが多かったので、ゼロから建物が建っていく様子を見るのは初めてでした。更地だったところに基礎ができて、壁ができて…毎日風景が変わるんです。5ヶ月かけて、『建物ができる』過程を目の当たりにしましたが、とても感動したことを強く覚えています」。

▲「自分が関わった建物を多くの方に使ってもらえるということも嬉しいです」と畠澤さん。

 一方で、難しさを感じることも多いそうです。建築の現場は考えることや関わる人たちが多く、計画通りに進まないこともあります。例えば、予定していた通りにものが届かない、不測の事態でやろうと思っていたことができなくなるということも起こります。

「全体の工期が決まっているので、どうやったら計画に遅れを出さないか考える必要があるんですね。『今日この作業ができないなら先にこの作業を進めよう』とか、『作業員さんの予定を変えてもらおう』とか、都度調整して進めていくことが重要だと考えています」。この仕事を通して、コミュニケーション力や柔軟に対応する力がついたと畠澤さんは感じています。

建築業の未来を担う若手の存在

 建築業の未来はどのようなものなのでしょうか。
業界全体が若手不足であることに大きな課題感を小西さんは感じています。

 「現場管理の仕事は資格が無いとできません。若手でも活躍できるように、国や業界が環境を整えている最中です。例えば、畠澤さんが取得した、一級建築施工管理技士補は、現場の技術者の人手不足を補うために、2021年度に新設された新しい資格です。

二級建築施工管理技士では中規模工事の現場監督しか担当できませんが、一級建築施工管理技士補になると、畠澤さんのように大規模工事の現場監督を担当できるようになります。

しかし、一級建築施工管理技士を取得するためには、二次試験まで合格する必要があり、資格取得を難しいものにしていました。新しい資格制度では、一次試験に合格することで一級建築施工管理技士補の資格を得られるため、若手が現場での経験を積みやすくなり、さらに人手不足の解消にも繋がります」と小西さん。

 その後のキャリアアップについても、小西さんにお伺いしました
「大体、入社後3〜10年程度で一級建築施工管理技士を取得を目指します。その後は、現場の経験を積みながら、先程お話にあったような施工図や内訳書の作成にも関わるようになったり、現場所長として工事の最終責任者を務めるようになったりします。さらにその後は、入札書類の作成や見積書の作成など、より重要な業務を担当していくことになります。こうしたキャリアアップを通して、地図に残る大きな仕事に関わる機会が増えていきます」。

▲「若手でも活躍でき、さらに何十年経っても地図に残る建築物を創る
仕事であるという魅力をぜひ伝えたいです」と小西さん。

 最後に、畠澤さんに建築業に興味がある方に向けたメッセージを頂きました。

「難しいことも多いですが、やりがいがある仕事です。様々な人たちとのコミュニケーションの中で自分の成長と向き合えることも魅力の1つ。例えば、職人さんから『今日の現場はよかったね』と声をかけてもらったときなど、とても嬉しいんですよ!建物を作ることに興味がある方はぜひ一緒に働きましょう!」

建築の仕事は、建物と向き合うことだけではなく、人とも向き合うことなのかもしれません。若手でも活躍できる仕事に、あなたも挑戦してみませんか?

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「#美幌ではたらく powered by 美幌建設業協会」。
美幌町建設業協会の代表的な5業種で働く方への取材を行い、それぞれの業種の役割や働く人の思いについてお伝えしていきます。

地域や私たちの「当たり前の日常」を作る仕事、それが建設業。
建設業界にご興味ある方はもちろん、みなさんもぜひこのシリーズを読んで、建設業の価値や役割について考えてみてくださいね!

写真:ドット道東編集部

取材・文

百目木(どめき)幸枝

青森県八戸市出身。秋田県立大学、北海道大学院修了後、東京の研究開発ベンチャーで8年働き、2019年夫婦で退社&息子出産&北海道網走郡美幌町で農業研修開始。2022年の就農に向けて「さいこうファーム」の設立準備中。夫婦で編集執筆ユニット「再考編集室」を結成し、地域や人の豊かさを日々発信しています。
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