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「娯楽が少ないのに、なぜ暮らし続ける?」/リトルドートー 根室4町SP公務員クロストーク 全文記事

2026年2月28日、東京・池尻で開催されたイベント「リトルドートー 根室4町SP」。北海道の道東エリア・根室管内の別海町、中標津町、標津町、羅臼町から自治体職員が集まり、それぞれの地域で働くリアルな日常や仕事の魅力について語りました。

自治体によるプレゼンテーションのあとには、地域で働く職員と、移住者・出身者によるクロストークを実施。 「なぜその町で働いているのか」「地方で暮らす面白さとは何か」——。それぞれの立場から語られた言葉には、パンフレットだけでは伝わらない、地域で生きるリアルな声が詰まっていました。

登壇したのはこういう場にはじめて出る役場職員の方々

野澤:本日進行を務める野澤です。こういうイベントって、PR担当の人がいいことを話して終わることが多いと思うんですけど、今日は違います。今日は普段、役場で黙々と自身の業務をしている方々に来てもらっています。

会場から少し笑いが起きる。

野澤:皆さん慣れてらっしゃらないので、めちゃくちゃ緊張されています(笑)。だからこそと言いますか、リアルな話が聞けるかなと思っています!それでは皆さんよろしくお願いします。

野澤:それでは皆さん、自己紹介をお願いできますでしょうか?お名前、公務員になった理由、どんな仕事をされているか。それぞれ教えてください!

川上:羅臼町役場の川上莉佳です。よろしくお願いします。公務員になった理由なんですけど、私はもともと羅臼出身で、学生時代は札幌で過ごしていました。そこからUターンという形で戻ってきました。やっぱり自然が豊かな町で働きたいなと思ったのがきっかけです。今の仕事は総務課で、役場の職員の人事関係だったり、防災関係の仕事だったり、あとは議会事務局のサポートなども担当しています。今日はよろしくお願いします。

横山:中標津町役場で保育士をしています、横山です。保育士を目指したのは、子どもがやっぱり大好きだったからです。それがきっかけで保育の仕事に就きました。公務員の保育士を選んだ理由としては、やっぱり給料とかボーナスがしっかりしているというところもあって、公務員を選びました。今日はよろしくお願いします。

澤合:標津町役場から来ました澤合(さわあい)と申します。普段は建設水道課で、土木系の技術職として働いていて、道路とか橋とか川とか、そういうインフラ整備の仕事をしています。なんでこの仕事を選んだかっていうと、安定した仕事がいいなって思ったのがきっかけです。ただ、なんで標津町なのかって言われると、実は特別な理由があるわけじゃなくて、大学の就職課の先生に『標津町いいんじゃない?』って言われて受けたのがきっかけでした。なので、どちらかというと僕も移住者側の立場なので、そういう視点で皆さんとお話できたらなと思っています。よろしくお願いします。

津田:別海町役場で保育士をしています、津田です。保育士になろうと思ったきっかけは、私、出身は羅臼なんですけど、中学生のときに近所の子どもを家まで送ったことがあって、その様子を先生が見ていてくれて、成績表に書いてくれたんです。それがすごく嬉しくて、それで保育の仕事を目指すようになりました。別海町に就職した理由は、私が就職活動していたときに、保育士の募集が7人くらいあって、応募が70〜80人くらいいたんです。すごく倍率が高かったんですけど、受け皿がある町なんだなと思って受けました。実は1回目は受からなくて、何回か挑戦して、4年目でやっと入れました。それからずっと働いていて、今も続けています。今日はよろしくお願いします。

野澤:皆さん、ありがとうございます!今日はこの4名の他に根室地域に縁のある若者2人にも登壇してもらい、地域の人目線で質問などもしてもらえたらなと思っています。ではお二人も自己紹介をお願いします。

橋本:こんにちは。中標津町から来ました橋本です。道東でゆかりがあるのは、帯広と釧路と、今住んでいる中標津です。今は中標津に住んで2年目で、2年前までは東京に住んでいました。今は不動産関係の仕事をしています。移住のきっかけとしては、仕事があったというのも大きいんですが、それだけで移住を決断するのはなかなかハードルが高かったです。でも東京にいたときに、道東のイベントとか、道東出身の若者が集まる場があって、そういうところで背中を押してもらった部分もあって、今は中標津に住んでいます。」

右代:​​「別海町出身の右代 朝陽(うしろ あさひ)です。別海町には生まれてから中学校まで住んでいました。中学校卒業後は釧路の高校に進学して、大学で東京に出てきました。仕事は銀行で法人営業をしています。その一方で、東京で道東出身の若者が集まる『東京道東同好会』というコミュニティをやっていて、20代中心に道東のつながりをつくる活動をしています。DOTONETのインターンをしていたこともあって、今回こういうイベントのお手伝いもさせてもらっています。今日はよろしくお願いします。

野澤:皆さん、ありがとうございます!今日はこの6名で40分ほどお時間をもらってトークを進めていきたいと思います!

娯楽が少ないのに住む理由って

野澤:いきなりですが、単刀直入に聞きます。根室地域って娯楽とかお店が少ないじゃないですか。今日は東京でのイベントなので、もし根室地域に住むとしたらそのギャップがすごいと思うんです。それでも、なぜ今の町に暮らし続けているのか教えてもらっていいですか?」

川上:私はやっぱり、自然が身近にあることですね。娯楽施設とかお店は確かに少ないです。町民の人も『こういう店あったらいいな』っていう話はよくしています。でも、なかったらなかったでどうにかなるんですよね。標津町さんとか中標津町さんまで少しドライブすれば大体のものはありますし、生活はそんなに困らないです。

野澤:川上さんは札幌に住んでた時期も長いですよね?3歳から20歳までですよね。便利な暮らしを捨てて羅臼に戻るって、結構勇気いると思うんですけど

川上:そうですね…。札幌って便利なんですけど、人が多いんですよね。ずっといると、なんとなく心がざわざわするというか。羅臼に帰ってくると、それがすっとなくなる感じがあって。それで、私にはこっちの方が合ってるのかなって思いました。

澤合:標津町ももちろん飲み屋はめちゃめちゃ少ないんですよ。でも僕は、選択肢が少ない方が楽なんですよね。

野澤:どういうことですか?

澤合:昨日東京で飲みに行ったんですけど、店を選ぶのめちゃくちゃ悩んだんですよ。でも標津は違います。空いてるから入ろう。

会場が笑う。

澤合:それしかないです(笑)だからというか店主さんとも仲良いんですよ。」『今日もうちょっと開けてくださいよ』とか普通に言えますし。地域の人との距離がすごく近いので、暮らしやすいですね。

野澤:さっき人見知りっておっしゃってましたよね?

澤合: はい(笑)。

野澤:「人見知りなのに、狭いコミュニティの方がいいんですか?

澤合:そうなんですよ。狭いコミュニティだと、顔見知りがどんどん増えていくんですよね。「澤合くん、澤合くん」って声かけてもらえる人が増えていく。大学の先生が僕に標津を勧めた理由、最近わかった気がします。

津田:私は通勤が15分くらいあるんですけど、帰り道の景色が好きで。星がすごくきれいな日もあるし、雪がキラキラしてる日もあるんです。保育の仕事っていろいろあるんですけど…。帰りの車の中で、気持ちがフラットになるんですよね。自然の力で切り替えられてる感じがします。

野澤:津田さんは社会人になって20年以上別海町で暮らしていますよね。ずっと暮らしていて、娯楽が少ないなって思うことはないですか?

津田:息子がいるんですけど、 『もっと遊ぶ場所あったらいいのに』って言うことはあります。でも修学旅行から帰ってくると『やっぱりここ落ち着く』って息子も言うんですよね。

閉鎖的なイメージもあるけど

野澤:では次の質問にいきましょうか。地方って、人間関係が狭いとか、閉鎖的ってイメージあると思うんですけど。

澤合:よく言われますね。でも顔見知りが多いので、物もらったりとか逆に人間関係が狭い的なことがあるからこその良さもあります。イベント行ったら『これ食べてって』とか。居酒屋行ったら『いつもありがとう』ってサービス出たり。」

野澤:たしかに。

澤合:東京って、隣の人も知らないじゃないですか。僕からするとそれでよく生きていけるなって思うんですよ。(笑)

会場が笑う。

澤合:すれ違った人と『おはよう、今日は天気いいね』って話すのが僕は好きです。

ここで、中標津に移住した橋本さんが話し始めてくれました。

橋本:僕、移住してびっくりしたのが、車ですれ違うと手振る文化です。最初、気づかなくて素通りしてたんですよ。そしたら次会ったときに『この前すれ違ったよね』って言われて。それから対向車めちゃくちゃ見るようになりました。

野澤:地方あるあるですね。僕の友達、黄色いハスラー乗ってるんですけど、あれ絶対わかるんですよ。『お前あそこ行っただろ』って。

澤合:悪いことできないですね(笑)。

野澤:次の質問にいきますね。町の課題とかってありますか?」

少し沈黙。

野澤:ない?満足してますか?

会場が少し笑う。そこで、別海出身で東京に住む右代さんが答えた。

右代:移動手段ですね。僕、今東京に住んでいて車ないんですけど。空港から実家に帰る手段がほぼないんですよ。高齢化も進んでいく中で、公共交通は大きな課題かなと思っています。」

野澤:たしかに。特に中高生とかにとってはとても大変な問題ですよね。親が学校や習い事の送迎もするなどもあるし、負担も大きい。大人になっちゃえば車の方が電車より楽だから、逆に「都会の人大変だね」って思ったりもしますし。自動運転の時代が来たら根室はそういう課題もクリアできそうですね」

この町に未来はありますか?

野澤:最後の質問させてください!皆さんが暮らす町に未来を感じますか?

澤合:「最近、若い人が少しずつ入ってきてます。地域おこし協力隊も増えてますし。建設現場でも、移住してきた若い職人さんとか見かけるんですよ。町の人たちも面白いことやろうとしてるので、未来は明るいと思います。」

川上:羅臼では最近、新しい宿や飲食店が少しずつ増えてきています。観光船もすごく人気で、海外のお客さんも増えています。」

野澤:この前行った時、外国人めちゃくちゃ多かったですね。

川上:そうなんです。羅臼が外国みたいになってます(笑)。

津田:保育の現場でも、地域外で働いて戻ってくる人が増えています。いろんな考え方が入ってきて、保育も面白くなってきてると思います。

横山:中標津は最近びっくりドンキーができました。

会場が笑う。

横山:飲食店も増えてきていて、町での暮らしも不安を感じることはないですね。

野澤:皆さんありがとうございます。もちろんこの場だからこそ絞り出してくれたのもあると思います。そもそも、今どこに暮らしていても不安って大きいと思うんです。その中でも希望や未来がより良くなるって思える町の方が僕はいいと思っていて。この企画が始まってから根室地域の方々に「未来って明るいですか?」って聞きまくってました。結構、ポジティブな人が多いなっていうのが根室地域の僕の印象で。だから今、皆さんが話をしてくれたのも嘘偽りなく。自分たちの暮らす町がいいよ、という本当のメッセージだと思ってます。

野澤:もっと聞きたいことあると思うので、ぜひこのあと交流会で話してみてください。!

クロストークが終わるころには、会場の空気はすっかり柔らかくなっていました。最初は緊張していた登壇者たちも、気づけば笑いながら話していて、会場の参加者も頷きながら聞いている姿が印象的でした。

便利さで比べれば、東京の方が圧倒的に多くのものがあります。お店も、娯楽も、交通も、何でもあります。

それでも彼らが話していたのは、「それでもこの町で暮らしている理由」でした。

帰り道の星空。すれ違う人とのあいさつ。 顔を覚えてもらえる距離感。そして、これから町を面白くしていこうとする人たち。

今回のクロストークは、そんな根室管内4町のリアルな暮らしの一部を見せてくれる時間でした。

この記事ではクロストークの様子を紹介しましたが、イベントでは各町のプレゼンテーションも行われています。

それぞれの町の取り組みや魅力については、ぜひ他の記事もあわせて読んでみてください。

きっと、「同じ道東でも、こんなに違うんだ」という発見があるはずです。